爪研ぐ獣達
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、
そしてギロチンの家名を上層部に利用されて出世を重ねていったが、
タシロ・ヴァゴからすればそれはきっと面白くなかったに違いない。
そこに遠因があるとすれば今回の事も一応は納得出来てしまうファラであったが、
(しかし、タシロが…いくら何でもそんな事くらいでこのようにおかしな命令を出すだろうか)
タシロの為人ひととなりを多少なりとも知るファラは、軍人的な思考ではやはりそれを納得出来ない。
少しずつ手を入れ増強してきたラゲーン基地を捨てて、
ベスパにとって一番資源が採れる美味しい地球の版図である欧州を捨てて、
ザンスカールは一体どういう長期的プランを見ているのだとファラも疑問に思う。
こんなおかしな命令を出してでも自分を惨たらしく扱いたいのか。
上層部には、私の味方をしてくれる者は1人もいないらしい。
ファラはそう思って、もはやザンスカールに自分の居場所は無いのだろうと考える。
(だが、それも当然か……女王マリアの実弟を……、
クロノクル・アシャーを失わせてしまったあの時から、もう私はザンスカールの鼻つまみ者)
自虐の微笑みが漏れる。
「メッチェ…私と一緒に…2人だけで、どこか遠くに―――」
ファラの湿った唇から紡がれたその声は、とても細くて小さくて、そして頼りない。
リカールのジェネレーターの駆動音とスラスター音、そして風を切る音が
そんな頼りない女の本音≠掻き消す。
「…ファラ様?何か仰いましたか?」
リカールの操縦桿を預かるメッチェが、優しい声色と共にファラを見る。
ファラは、一瞬、先程の言葉の続きを声高に叫びたい衝動に駆られて、
そしてそれを抑え込んで愛する腹心へと言う。
「――何でもないよ、メッチェ」
言えば、きっとメッチェは戸惑いながらもファラに着いてきてくれるだろう。
メッチェとならギロチンの家系もザンスカールでの地位も、
マリア主義でさえも捨てて、どこででも生きていける。
ファラはそう思ったが、そうすればメッチェも自分もザンスカールのお尋ね者に転落する。
自分だけならば、十中八九処刑も決まっているのだからともかく…
愛するメッチェ・ルーベンスまでをも巻き込む事は出来なかった。
例え、メッチェ自身がそれを受け入れてくれてもだ。
(どこまでも行くしかないのさ…ギロチンの鈴から、私は決して逃れられない)
デプレ率いるジブラルタル攻略軍は、後もう少しで目的地へと到着する。
むざむざジブラルタルの占拠を見逃すリガ・ミリティアではないだろう。
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