暁 〜小説投稿サイト〜
ヤザン・リガミリティア
爪研ぐ獣達
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リカールを遠目に見るデプレ。

 

「…あなたとは短くない付き合いでしたがね………宇宙に上がればタシロの処刑、か」

 

自分でもどう言えば良いのか判別し難い感情で、そう呟いていた。

 

 

――

 



 

 

そのリカールは、優れた飛行能力とボディの大きさを買われて

機体下部に大型コンテナを追装して空を飛んでいる。

ファラは、デプレが心配した通りにコクピット内で俯いていた。

 

(……私の数々の失態に、ピピニーデン隊の喪失まで加わった。

加わった………………ッ。加わっただと!?)

 

ラゲーンから出撃する直前に受けたタシロ・ヴァゴからの通信を思い出す度、

ファラ・グリフォンは美しい顔を歪めてしまう。

 

(ピピニーデンを独立部隊としたのは誰だ!

私の指揮下には無かったじゃないか!

ピピニーデンの動きに乗って賭けたのは確かに私だ!

だけど!私にはそもそも止める手立てがあったか!?)

 

リカールの後部座席で、ファラは己の顔を片手で抑えたのは

そうでもしなければ涙が出てしまいそうだったからかもしれない。

ファラは己の心が弱り乱れているのを自覚している。

それでも涙は零さないが、

そういう乱れた態度を漏らすのはリカールのコクピットにメッチェしかいないからであった。

 

「責任をとって、デプレの指揮下で

ラゲーンを捨ててでも総力で当たりジブラルタルを攻略せよ。

そして、占拠したマスドライバーで地上軍を暫時宇宙に上げよ…。

一体何なのだろうな、この命令は…笑えてしまうよ」

 

「確かにタシロ大佐の命令には不可解な点が見受けられます。

ファラ様…自暴自棄にならず、本国に連絡をとりましょう。

タシロ大佐が本国からの命令を曲解している可能性もあるのですから」

 

漏れる不満に、メッチェは恋人でもある上司を勇気付ける。

メッチェの気遣いの言葉は嬉しいが、やはりファラは諦めたように笑うだけだった。

 

タシロ・ヴァゴは自分をそこまで虐めたいのか。

そこまで嫌われていたのか。

いや、そうなのかもしれない…とファラは思った。

 

かつて、ファラ・グリフォンはその美貌からタシロ・ヴァゴに言い寄られた事がある。

「私に靡けば安全な後方で立身出世させてやる」と遠回しに言われて体を撫で回されたが、

当時既に佐官であったタシロの誘いを、

士官学校出たての美しき軍人はやはり遠回しに…

タシロのプライドにまで配慮した言い回しで断った。

その後、ファラ・グリフォンは己の実力と
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