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ヤザン・リガミリティア
ジェヴォーダンの獣
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手にしていたロングライフルを逆手持ちにし銃床からサーベルの光刃を発振させている。

ロングライフルの尻からあのようなサーベルが出るのも驚きだが、

それ以上にいつサーベルを展開したのかがピピニーデンには分からなかった。

 

「回避と攻撃を同じタイミングで仕掛けてきた…こ、こいつは…ッ」

 

ピピニーデンの心に戦慄を超えた感情が生まれ始めていた。

シャッコーが目を見開いて血のように朱い目でピピニーデンを見つめている。

 

「ハァッ…!ハァッ…!ハァッ!」

 

パイロットスーツの内側が、嫌な汗で湿る。

ピピニーデンの頬にも額にも脂汗がじっとり浮かんでいた。

 

「クロノクルの仇なのだ…ここで終われん!」

 

ライフルを牽制がてら撃ち、

再び距離を詰めて今度は肩部から取り出したビームトマホークを振るう。

だがシャッコーは、ピピニーデンの重い一撃もロングビームサーベルで受け止めると、

そのままいなしてトムリアットの体勢を崩してしまう。

 

「グッ!」

 

各所のアポジを駆使しすぐさまトムリアットを立て直したピピニーデンが、

再度トマホークを振るう。

今度は下から逆袈裟の形で振り上げるが…。

 

「う、ぐ、うぅ…!私が…遊ばれているというのか!?」

 

またしても柄の長いサーベルで捌かれる。

諦めずに、ピピニーデンは何度もトマホークとサーベルの両方を使い連撃を繰り出すが、

その全てをシャッコーは長柄のビーム銃剣でいなし続ける。

まるで闘牛をあしらうマタドールが如くであった。

ピピニーデンの猛撃にも関わらずシャッコーは依然として無傷。

一方、彼のトムリアットは傷だらけである。

これがそのまま、シャッコーのパイロットと己の力量差だと彼は理解した。

ピピニーデン・サーカスとまで謳われた絶妙の技の全てが通じない。

彼の築き上げてきたプライドと自信が段々と崩れていく。

 

(兵達が恐れたジェヴォーダンの獣!…こいつが、こいつが!間違いない!)

 

シャッコーの恐ろしい程の野獣的な動きとプレッシャーは、

ベスパのイエロージャケットを翻弄したオクシタニーの物の怪という評がそのまま当て嵌まる。

シャッコーを駆っていることから、ファラ・グリフォンが予見していた通り

ジェヴォーダンの獣がクロノクル・アシャーを打倒した仇敵に違いない。

ピピニーデンは確信した。

 

「だ、だが…動けん…!どこをどうすれば奴を倒せるというのだ!」

 

そうとは分かっても、仇敵を前にしてもピピニーデンは動けなかった。


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