獣の安息 その1
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ヤザンはクロノクル・アシャーの名を知っていた。
ザンスカール帝国が建てられた時、世界中で頻繁にニュースになって流れていたし、
ヤザンはリガ・ミリティアの諜報部とも立場上意見交換する機会があった。
「クロノクル・アシャー…こいつはザンスカール帝国の女王の弟だ」
「そうか!どこかで聞いた名だと思ったが!」
伯爵も、目の前の精神をやられた男が女王の弟だと知って驚愕を隠せない。
他の連中もだ。
ザワザワと騒ぎ立てて皆が驚くのは当然だった。
建国の際の世界中継でもクロノクルの姿は映像に映っていたはずだが、
今のクロノクルはコクピットから引き上げた時には既に全身火傷で、
治療後は全身包帯男なのだから容姿から判別するのは難しかった。
そして、そう王族と分かってはシャクティにも協力を要請するしかないのがリガ・ミリティアだ。
女王の弟が記憶喪失と言ってもいい状態で手の内にあり、
シャクティを姉と誤認していて彼女の言いなりだ。
利用方法はいくらでもある。
クロノクル・アシャーには無限の使い道があり、その為にもシャクティ・カリンの力が必要だ。
「…分かりました。この人が…クロノクルさんの怪我が良くなるまでぐらいなら…」
たっぷり迷って、何度もウッソの顔色を伺った後に、
なんだかんだでクロノクルの容態が心配な心優しい少女は
渋々ではあるが同行を決意した。
ウッソが既にレジスタンスと共に行くと決意していたのも理由としてはあるだろう。
ウッソはシャクティのその決意をかなり複雑そうな表情で見つめていたのだった。
そういったてんやわんやがあって、今このカリーン地下工場にはウッソもシャクティもいた。
当然、クロノクル・アシャーも。
ついでにカテジナ・ルースもいる。
シャクティが、クロノクルのせいで
赤ん坊…カルルマンの世話に専念出来なくなってしまったので、
カテジナがカルルマンの世話をさせられている。
赤ん坊が好きではなかったらしく、最初はかなり嫌がっていたが
カテジナ以外誰も手が空いていないのだから仕方がない。
それでもシャクティは暇を見つけてはカルルマンの世話に加わってくれるので、
カテジナは不慣れな子育てを年下の少女の手を借りて熟していった。
だが、やはりカテジナは内心不満だらけだ。
「…こんな場所で、こんな子の面倒を…なんで私が」
そうぶつくさ言っている事が多いが、それをヤザンの前でも言うのでその度に、
「うるさい奴だ。大体そのガキを拾ったのは貴様だろうに…。
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