獣の安息 その1
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特殊性癖等ではないと皆も気づき、
医師のレオニードに説明を求めた。
レオニードの診立てはこうだった。
「…恐らく、強いショックを受けたことによる記憶喪失の類だろう。
シャクティさんを姉と呼ぶのは…きっとシャクティさんが彼の姉に似ているのではないかな?
彼にいくつかの問診をしてみたが、彼の言動はまるで幼い少年のようだ。
記憶の混濁に、退行の症状がある。
この症状がいつまで続くのか、回復の見込みはあるのか…。
残念だが、こういう症状は断言出来んのだよ。
明日治ることもあるし、1年、2年後かもしれん。10年…或いは一生かかるかもしれない。
根気よく治療するしかない」
そういうことだった。
困ったのはシャクティだ。そしてウッソも。
赤髪のパイロットを無理矢理シャクティから離して連れて行こうとすると、
大の男がわんわんと泣き出してしまうのだ。
それを見るとシャクティもついつい
「あぁ泣かないでください。えぇと……よ、よしよし…ほら、泣いちゃダメよ?
あなたは…男の子でしょう?」
宥め方はこれで良いのか?と戸惑いつつ宥めてしまう。
赤髪の包帯男は満足気であるのでこれで良いのだろう。
「…うん、姉さん。わかったよ…俺は男だもんな」
シャクティがそうすると赤髪の青年は泣き止んでニコリと笑うのだった。
ウッソはあんぐりとその様を眺めて、
そして心の片隅にモヤモヤとしたものが生まれるのを感じていた。
(ぼ、僕のシャクティだぞ…!)
ウッソはムスッとした顔で、幼馴染の少女に頭を撫でられている包帯男を見る。
包帯男…、――シャクティが聞き出した所によるとクロノクル・アシャー――の
扱いをどうするかはリガ・ミリティアの大人連中の判断に任せる事となった。
レオニードは、
「医者の見地から言わせてもらうと、クロノクル君はシャクティさんがいると安定する。
一緒に来てくれたほうが、今後のリハビリ的にも安心できる」
との理由でシャクティの同行を望んだ。
記憶の混濁もだが、クロノクルの肉体も重傷なのは変わっていない。
錯乱して暴れだしたりしたら、そのまま死ぬ可能性もある。
ヤザンもまた、違う理由から同行を望んだ。
「この退行化が演技なら、こいつの演技力は全く一流の俳優だな。
本当にこいつの精神がガキに戻っているなら
連れて行く意味などない…と言いたい所だがなァ。
クロノクル・アシャーという名は聞き覚えがある。
報道でも流れていた…覚えているか伯爵」
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