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ヤザン・リガミリティア
獣の安息 その1
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しても失敗してもファラ・グリフォンの独断暴走で片付けるつもりなのだろう。

 

(…失態を重ねた私に、最後に奉公せよ…ということか。

或いは、これを成功させればギロチンだけは免れるのかもしれん)

 

ファラは、その無体な非公式な命令をもはや受け入れた。

だが、彼女の忠実なる副官メッチェ・ルーベンスはファラ以上に憤慨の念を燻ぶらせている。

メッチェは金髪と端正な甘い顔を持つ美青年であるが、

今その端麗な顔は負の感情から歪んでいた。

尊敬し、そして1人の女性として愛する上官を庇いたい一心でメッチェは抗弁しだす。

 

「大尉!その命令はあまりに…!

ファラ様は、この地上で宇宙からのろくな支援も無いまま良く欧州を攻めています。

地球降下作戦の初期段階の成功は間違いなくファラ様の功績で――」

 

「よいのだ!メッチェ」

 

だが、その抗弁はファラ本人に止められた。

 

「初期段階の功績は私自身誇るものだが、その後の失態も間違いなく私のもの。

一つ二つの失敗ではないからな…無能の烙印は免れんよ…」

 

「ファラ様…」

 

ファラとメッチェの視線が悲しく交じる。

それをピピニーデンは冷たく見つめて、

 

(ふん…分かっているじゃないか。ギロチンの家系の女狐め。

所詮、お前はギロチンパフォーマンスと美貌でタシロ大佐に取り入っただけだったのさ。

当初は私も、あなたのことを大した人だと思ったが…

化けの皮が剥がれればこんなものなのだろうよ。

この調子ではギロチンの家名も金で買ったという兵の噂も本当かもしれんな)

 

心の底では上級士官を侮ること甚だしかった。

だが、ファラ・グリフォンという女は烙印を押される程の無能ではない。

それどころか有能と謳われるだけの才感があって、

ピピニーデンの思う通り当初は誰もが彼女の鮮やかな手腕に良い意味で驚いたものだ。

その才媛が、今では絞り出す言葉からも力を失っていた。

 

「済まなかった、大尉。命令は了解した。

私が引越公社を説き伏せてみせるよ。

だが、私がしくじって宇宙へ帰れなければそれはそれで本国も困るだろう?

交渉には協力して貰いたいものだな」

 

交渉≠ニは無論、荒事込みである。

 

「…分かりました。それぐらいは協力させて頂きます。

では、ジブラルタルへの出立は明朝になりますので、ご支度の程をお願いします」

 

ピピニーデンが、内心でどう思おうとも形式張った見事な敬礼を返すと、

ファラは陰鬱さを滲ませる表情でピピニーデンを見た。

 
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