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ヤザン・リガミリティア
獣の時代
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されると言いはしたが、

博愛主義者や人道主義者に言わせればそんな事は無いだろうし、

ウッソが「別に正当化されなくてもいい。逃げたい」と言って逃げ去ってもいい。

開き直って知らんぷりでも構わない。

彼の人生だ。好きに生きればいい。

特にリガ・ミリティアは軍隊ではない。

軍人でなければ戦場に立つ責任も無いのだ。

 

ヤザンとて、人殺しの罪科を説きはしたがその実、

彼自身戦場での殺し合いについて、全く良心の呵責はない。

欠片もない。

戦場に出る奴は殺し殺されて当然で、

寧ろ戦場とは殺しのスキルを磨き抜いた戦士達の一生の華舞台であり、

そういう戦士を殺すのは良心の呵責云々どころか達成感すらある。

戦士ならば戦場の空気に心躍らなければ嘘だ。彼はそう思う。

ヤザンにとって問題は、

あの少年が兵士の…戦士の心構えも無く戦場に立ち敵を討ったことなのだ。

戦場に立つ者は戦士でなくてはならない。

戦う心の無い者は寧ろ消えてくれとすら思っている。

 

だが、子供であろうとシュラク隊やマーベットのように女であろうと、

もし…自分の意志で戦場に立つ兵士・戦士たらんという心を持ってヤザンの元に来るなら、

そいつの面倒は死ぬまで見てやる。

ヤザン・ゲーブルとはそういう男だった。

 

伯爵は溜息をつく。

どうやら、ヤザンがウッソ・エヴィンを率先して説得することは期待できない。

 

「…ウッソ君の心一つ、か。願うしかないな」

 

「フッ…戦場に子供が来るのを願う大人か。俺達は随分上等な大人だな、伯爵?」

 

「笑ってくれていいよ、隊長」

 

今は、酷い時代だった。

 

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