獣の時代
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奴らも殺されれば死ぬ人間だ。…だが――」
そう言っているヤザンだが、
彼の脳裏に去来するビジョンは不可思議なエネルギーフィールドに包まれて
あらゆる攻撃を弾きビームサーベルを有り得ない距離まで伸ばしてくるZガンダムの姿。
「―少しばかり、化け物的な力を発揮する時がある。
バリアーもない機体でビームを弾いたりな。
戦う分には…やり甲斐がある人種さ」
伯爵は、なんだそれは…と言いつつヤザン流の冗談かと思い笑うが、
すぐにヤザンが冗談を言ったのではないと悟って顔を引き攣らせた。
ごほんっ、と咳払いを一つし伯爵は気を取り直す。
「それで、どうするんだ?」
「なにをだ」
「ウッソ君だよ。我々の仲間に引き入れるんだろう?
隊長の話が本当なら、
昔に隊長を手こずらせたニュータイプが味方になれば心強いなんてものじゃない。
この戦争にも勝ち目が見えてくるぞ」
「……」
ヤザンの、肉を食う手がまた止まった。
今度は真っ直ぐ前を向いたままオイ・ニュングは続ける。
「逃す手はない、隊長。あの子は強力な戦力だ。
綺麗事を言っていられる程、リガ・ミリティアに余裕はない」
無言のままヤザンは肉を食うことを再開した。
伯爵も静かにヤザンが食い終わるのを…というより意見を述べてくれるのを待つ。
「……ウッソは、自分から戦場に来ちまったんだ。
このまま戦場に残るか…去るか…後はあの小僧が自分で決めればいい」
「隊長…私はこれから酷いことを言う」
伯爵はそう前置いて、いつもの温和な仮面を外し眉間に皺が刻まれた険しい顔で続けた。
「……ウッソ君をこのままなし崩し的に巻き込もう。
隊長ならあの子を引っ張ってこれるのではないかね?
あの子は我々の中では一番、隊長に懐いているように思う」
「ハンッ、ふざけろよ。ただでさえ女子供が戦場に多くて参っているんだ。
俺が率先してスカウトするわけがないだろう!」
ヤザンは不機嫌そうに声を荒げた。しかし、だが――と続ける。
「――あいつが自分の意思で兵士になると…
そう決めるなら俺が面倒を見てやるさ。
あんたにもそう約束しちまったからな」
ヤザンは薄く笑ってそう告げた。
既に、あの少年にはヤザン流に諭すだけは諭した。
人殺し、という行為についてどう向き合うか…
それはもう後はウッソ・エヴィン次第だとヤザンは考えている。
兵士になれば殺人は正当化
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