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ヤザン・リガミリティア
獣の時代
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トラウマなんて経験は無かったが、

数多くの新兵を見てきたヤザンだからこそ分かる。

潰れる奴と、潰れない奴。

ウッソ・エヴィンは明らかに後者だった。

 

(シミュレーターを弄っていたからといって、いきなりの実戦でああも動けるものか!

コア・ファイター単機でゾロ大部隊に飛び込み…1機撃墜とは…。

この小僧…アムロ・レイの再来だとでもいうのか)

 

連邦時代、広報で読んだアムロ・レイ。

ティターンズ時代、ジェリド・メサ達から聞き…

また自分も最上の獲物として追い求めたZのパイロット、カミーユ・ビダン。

ジオンの赤い彗星。

ニュータイプと呼ばれるパイロット適正に特別優れた者達は、

皆、いきなりMS等に乗り込んで戦果を挙げたという伝説がまことしやかに囁かれている。

 

(ニュータイプか…)

 

あの木星帰りの面白い男もそうだったらしいという噂は聞いたことがある。

過去に思いを馳せつつ、泣きじゃくる少年へヤザンは乱暴にタオルを投げつけた。

 

「鼻水面は見てるこっちが不快だ。拭け」

 

「は、はい…」

 

それから1時間程…カミオン隊が廃都ウーイッグにやってくるまで、

ウッソは瓦礫に座って泣いていた。

その横に、ヤザンはずっと何も言わず座って静かに少年を見ていたが、

ウッソとは反対側のヤザンの横にカテジナが腰掛け、

彼女の胸に抱かれている赤ん坊が延々と泣いているので

ひたすら泣いた子に挟まれなければならなかった。

 

(なんだこれは…新手の拷問か…?

この女、ガキを連れてさっさとどっか行けばいいものを!)

 

この時、オリファーやマーベット、シュラク隊の面々がこの場にいたら、

非常に珍しいヤザンのげっそり顔を見られただろう。

さすがのヤザンでも、泣く子はどうしようも無かった。

 

 

 



 

 

 

(姉さん…助けてよ…マリア姉さん…体中が痛いんだ…焼けるように熱いよ…姉さん…)

 

クロノクルはずっと夢うつつの中にいた。

体中が燃えるように熱く、指一本さえろくに動かない。

けれど、今のクロノクルは身動きできない事を嘆く余裕もない。

とにかく四六時中、彼は体中を襲うむず痒いような痛みに耐えねばならなかった。

そんな、苦痛に満ちた夢うつつの中で、クロノクルは歌を聞いた。

 

(あぁ…姉、さん…姉さんの…歌、だ…いるのかい…姉さん…来て、くれたの?)

 

こんな場所に、弟を見舞いにサイド2で女王をやっている姉が来てくれるわけがないのだが、


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