蜂を駆る獣
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お前にかなり特殊な訓練を施している。
軍の訓練もかくや…と言わんばかりの高度なものだ。
それを課すお前の親もだが、熟しているお前もかなり特殊だな…だが――」
こんなイ・カ・れ・た・家庭環境を提供する親の正体を知りたいヤザンだったが、
ウッソとシャクティの口からは大した情報は得られなかった。
分かったのは、とにかく彼らが只者ではないということだけだ。
「1年戦争からこっち…人間は飽きもせず戦争をし続けているんだ。
…こんな家庭もでるだろうさ」
それきりヤザンはウッソの家庭環境について感想を述べることは無かった。
だが、伯爵や老人達は、物悲しい感情が顔にまで滲んでいる…そういう顔だった。
長く続く戦乱の歴史を常識として育った世代は、この時代に疲れているのかもしれない。
「小僧、チップとプラグはどこだ?」
しんみりな老人達を差し置いて、
老人達よりも前に生まれていた実年齢最年長の若々しきヤザンは
ごそごそとウッソの家の棚を漁りだす。
「小僧じゃありません。ウッソです!」
少しムッとした顔でウッソは言い返したが、
素直にヤザンが求める物が眠る棚を教えてやるのだから純朴だった。
「ほう?見ろ、ロメロ。この規格はコア・ファイターに使えるんじゃないか?」
純朴少年の訴えを流しながらも家主の許可を得たヤザンとロメロ、そしてオーティス達は
次々に使えそうなジャンクパーツを発見しホクホク顔となっていた。
リガ・ミリティアの老人達は切り替えが早く、
そして自分達の非情さを知りながらもその道を突き進む事ができる。
だからレジスタンスなぞ出来るのだ。
「どうですか?父さんのコレクション、使えそうですか?」
少年がちらちらとヤザンの顔色を伺い、何かを期待しているかのような目で見る。
言葉からもそれは充分匂っていた。
「ん…そうだな。使える。でかしたぞ、小僧」
この少年がまだ親を恋しがっているのは年齢的にも仕方がないだろう。
ヤザンは乱暴にウッソの髪をわしゃわしゃと撫でる。
ヤザン・ゲーブルという男は、隊の指揮官を永く務めていた男だから、
人の心の機微というのには理解がある。
特に、女心は無理解甚だしい(或いは敢えて無視する)が
男心にはかなり理解があって融通も利くのは軍隊という男社会で生きてきたからだろう。
だからか、少年が自分に何を求めたのかも正確に、そして素早く分かっていた。
ヤザンは、この子供らが温かな家庭というものとは縁遠い生活を…
不幸
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