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ヤザン・リガミリティア
潜む獣
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いない。

記録映像を見たが、ゾロの空中制御は非常に滑らかで小回りが利いていた。

あれではジェムズガンは勿論、ジャベリンでさえ空戦で後手に回るだろう。

特に戦略的に見てゾロの航続距離は脅威そのもの。

一度、ザンスカールのゾロが出撃すればパイロットの体力さえ保てばゾロはどこまでも飛び、

空から急襲してくるのだ。

ビームローターだけで飛べば速度と高度はいまいちでも推進剤も消耗しないのだから、

まさに場所を選ばない神出鬼没が可能になる。

 

「宇宙では衛星軌道上にザンスカールの艦隊が集まっていますしね…。

資材を次々に集めて、一体何を作るのやら…奴ら、完全に調子に乗ってますよ」

 

報告を入れるオリファーの顔は苦々し気だ。

簡素な執務室の安物の椅子の背もたれを軋ませながらヤザンは頭の後ろで腕を組む。

 

「そりゃ調子にも乗るだろうぜ。連邦もうちらもこの体たらくだからな」

 

Vプロジェクト総責任者オイ・ニュング伯爵と、

その補佐役としてヤザン隊から派遣してやったマーベット・フィンガーハットは…

今現在必死に欧州各地のリガ・ミリティアの秘密工場を巡っている。

月からのガンイージのデータを元にしたVプロジェクトの要である『ガンダムタイプ』のMSは、

ザンスカールへの防諜対策としてパーツごとに生産工場を変え、

形式番号すら分かり難い捻ったものにして鋭意製作中である。

パーツを回収しガンダムタイプヴィクトリーガンダムの中心ユニット…コア・ファイターの簡易テストを行いつつ、

大型トレーラー『カミオン』でガンダムタイプをヤザンの元まで運ぶ。

そして月からガンイージを運んでくるシュラク隊と、

地上のヴィクトリーを運用するヤザン隊とが合流して、

そこでようやくリガ・ミリティアの本格的なMS運用作戦は開始するのだ。

 

だが、いい加減ストレスが限界だ。

ずっと教導だの会議だの地元勢力との交渉だのに引っ張られていたヤザンは、

命のやり取りに飢えているし何よりザンスカールにやられっぱなしなのが気に食わない。

コールドスリープから目覚めて数年。

最初はこの時代に戸惑い、

MSの操縦感の違いや情勢、価値観の変化具合についていくのに精一杯だったが…

そこは流石に天性の野獣、ヤザン・ゲーブルだった。

1週間と経たぬ内に時代に追いつき、馴染んだ。

それからは身に秘めた圧倒的な経験と闘争本能を発揮して

気付けばあっという間にリガ・ミリティアの幹部扱いだ。

 

「ラゲーンが落とされて、ザンスカールは地球にも橋頭堡を作っちまった。

衛星軌道で作ってるのも気になる
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