潜む獣
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女で、
こういう魅力的なオスの側にいるのは生物としての女の本能が満たされ充足する。
「私は隊長より、オリファー副隊長の方がタイプだわ」
そう言っていたジュンコ・ジェンコだが、
彼が既にマーベット・フィンガーハットという恋人がいると知ってからは
きっぱりオリファーへの色目はなくなった。
オリファーへの未練がさっさと消えてしまったのはやはりヤザンがいたからだろうか。
「あーあ…副隊長の方が優しい旦那になってくれそうだったのに。
やっぱ良い人にはもう恋人いるわよね…残念」
「でも、ヤザン隊長も家庭に入ったら意外と良いパパになりそうじゃない?」
ある日、MSのコクピット周りの調整中に漏らしたジュンコの恋の愚痴に
ケイトが白い歯を見せながらちょっと笑って言う。
それを聞いてジュンコははたと思った。
「…ケイトってさ――」
思えば、ケイトはあの野獣のような男と初対面の時から結構好感触な発言と態度が多い。
「ん?」
ケイトが整備班に提出するチェック表に記入しながら生返事。
「やっぱ隊長がタイプなの?」
「な、なんでよ!んなわけないじゃん!」
チェック表を滑らせて落とし、
はははっと笑って手をひらひらさせているがケイトの頬と鼻っ面はちょっと赤い。
そしてケイトのその反応を見てヘレンの片眉がちょっと曲がったのを
付き合いの長いジュンコ・ジェンコは見抜いた。
(…ヘレンも?…意外と…ヤザン隊長マークしてる奴、多いのかしら)
まぁ女だてらにパイロットなどやりたがって、しかもあの野獣の扱きを耐え抜いた女達だ。
人を見る基準に強いか弱いかを重要な指標とする性質があるのだろう。
特にヘレンやケイトはどちらも普通の女より強気で勝ち気で、
戦うことを好む所のある兵つわものな女だ。
ああいう如何にも強い男に惹かれるのも仕方ないのかもしれない。
チラリと20歩程向こうでジェムズガンを見上げながら
オリファーと真面目な顔で話し合っているヤザンを見る。
「ふーん…まぁ、応援はしたげるわよ。がんばんな」
ケイトとヘレンを見比べてにやりと笑うジュンコ・ジェンコの顔は少し悪どい。
「あ、あたしはそんなんじゃないから」
ヘレンはそそくさとコクピットにこもってチェックに逃げて、
ケイトも落としたチェック表を拾ってさっさと整備班のとこに逃げていった。
――
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