潜む獣
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あった。
「ヤザン隊長!チェックOKです!」
整備士長の男が大声で告げる。それは女パイロット達への死刑再執行時間の合図だ。
ジュンコは大きなため息をついて思わず整備士長へ訴えかけた。
「ちょっと!もうちょいゆっくりでいいのに!」
「すみません!ちんたらやってたら隊長に整備班がどやされるんで!
まわせーー!道を開けろ!ジェムズガンが出るぞ!」
整備班はさっさと仕事を終えて去っていき、
交代するように誘導員が間髪入れずに出てきてマーシャリングでパイロットを導く。
優秀なようで結構なことね、とジュンコは二度目のため息をついた。
その日、小休止を挟みながらも7機のジェムズガンの稼働時間は20時間を記録した。
関節パーツが総取り替えになったのは言うまでもないことだった。
―――
――
―
そのような訓練を潜り抜けてシュラク隊は結成された。
20人いた候補生は1週間のうちに6名にまでその数を減らしたが、
それからは数を減らすことなく皆がヤザンの訓練に齧りついた。
「戦場でお前らと敵として相対した時、俺はお前らを女と侮らん。
貴様らは立派に兵士だ。認めてやる」
卒・業・の日、ヤザンが彼女らに送った簡素な祝辞は彼女らにとって最高の褒め言葉だ。
ヤザンのことを女への偏見と横暴が服を着て歩いているような男だと思っていたからこそ、
ヤザンが自分達に送ったその言葉がいかな意味を持っているかを理解していた。
だが、そのお涙頂戴のお言葉でもって「はいさようなら」というわけではなかった。
そのままシュラク隊の総隊長にはヤザン・ゲーブルが当たること発表されて、
シュラク隊隊員となったジュンコ達は嬉しいやらげんなりやら、少し複雑な気持ちだ。
しかし、自分でも意外だがどうも嬉しい気持ちの方が上回るのは各隊員が共通していた。
シュラク隊達も、ヤザンがどういう男かを少しずつ理解していて、
いわゆる男気とか侠気とかいうものを身内に対しては発揮するタイプの男だと知ってからは
随分付き合いやすくなっていた。
彼は、実は面倒見の良い性格をしているのだ。
何より少なくともリガ・ミリティアでは、
パイロットとしての腕前は右に出る者はいないどころか並ぶ者がいないし、
意外なことにパイロット以外の仕事も卒なく熟す。
年の近い逞しい男は、宇宙戦国時代の昨今、死に絶えてしまってそうそう見かけない。
やはりどれだけ鍛えてもシュラク隊達は
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