置き去りにされた獣
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動けなくなった女の服を引きむしって犯すように、
ジェムズガンのコクピットハッチを敢えて徒手で殴りつける。
揺れる機体。
本当に訓練かと思うほどの殺気。
やがて眼前の全天周囲モニターが歪んでいき、装甲がひしゃげたことを視界から理解する。
「ひ、ひぃぃ!」
ガァン!という重低音と共にハッチを引っ剥がされたその候補生は、
迫るMSの鋼鉄の拳を見てそこで失禁して白目を剥いた。勿論、拳は寸止めされる。
ヤザンの戦いぶりは終始こんな有様で、
候補生達にわざとトラウマを植え付けるような非常に凶暴なものだった。
見る人が見れば非難の声があがるだろうことは確実だ。
「フン…MSの発展が操縦性を快適にしたが、
お陰でこんなヤワな奴らもMSを乗りこなせる。
耐G性能も向上し過ぎて…MSもまるでオモチャかシミュレーターだ」
1年戦争を知るパイロットから見れば、この技術の発展は快適であると同時に物足りない。
実戦での無茶な機動も吐きそうになるほどのGを感じないのは、
ある意味で戦いの中での命のやり取りを陳腐にしているとヤザンには感じられた。
それに、そのMSの発展が女達を容易にパイロットにしてしまう。
この女達の中に真の戦士と呼べる者が果たしてどれだけいるだろうか。
訓練開始から30分後、死屍累々といった有様の森の中で、
ヤザンはこの女達の中で何人が残ることが出来るのか、と苦々しい顔だった。
リガ・ミリティア全体として見れば残って欲しいが、
ヤザン個人としては全員さっさと脱落してもらいたい。
マーベット・フィンガーハットという存在があるが、あれはヤザンの中では稀有な例だった。
自分の扱きに付いてきたレアな女だ。
(戦場に女はいらん)
かつて、パプテマス・シロッコを取り巻いていた邪魔な女達を思い出し、
そして次に自分の部下を葬ってくれた女パイロットを思い出す。
(女が戦場の主役になる時代などと…。
よくも俺をこんな時代に取り残してくれたものだ…気に入らん。
しかも俺を凍らせた上層部連中は皆寿命でくたばっているときたもんだ…クソッ)
女子供が戦場にいるのが普通の宇宙戦国時代。
戦場を汚されたような気がしてヤザンは気が滅入ってくるのだった。
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