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ヤザン・リガミリティア
置き去りにされた獣
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「ヤザン隊長!チーム編成は!」

 

後を追って同高度を滑空するジュンコが聞くが、それを聞いてヤザンはせせら笑う。

 

「貴様ら全員対、この俺だ」

 

その通信に候補生の女達は一瞬、何を言っているのか理解が追いつかない。

 

「お一人で、私達全員を相手にする、と?」

 

ジュンコに続いて、以前の現場でも一緒で彼女と付き合いの古いヘレンが

不機嫌を声にのせて言った。

やはりヤザンは嘲笑うかのように返事をする。

 

「そうだ。貴様らのようなろくに実戦経験もない女の相手など俺一人で充分だってんだよ」

 

男の傲慢がありありと見える。

男女差別的な思考を隠しもしない、侮蔑的な上官。

最悪だ。

候補生達は皆そう思った。

 

「お言葉ですけど、私達実戦経験あります。今は戦国時代なんですよ?」

 

ジュンコが言う。

 

「俺から見れば無いも同然だ。

素人アマチュアは黙って俺の言うことを聞いてりゃいい」

 

プロのプライドを持っているジュンコは何かを言いかけて黙った。

ヘレンがまた彼女に変わって返事を投げてよこす。

 

「…分かりました。そこまで仰るなら、精々隊長の相手を務めさせて頂きます…!」

 

荒々しい気性のヘレンは、レバーを潰すのかという程自分の手に力が籠もるのを感じた。

この第一印象最悪の上官を叩きのめしてやる。

候補生達の意識は早速統一されていた。

 

 

―――

 

――

 



 

 

結果を言えば、ヤザンの過信かと思われた大言壮語は自信過剰でもなんでもなかった。

純粋に現実の戦力差を言っていた。

彼女らが味わったのは『恐怖』だ。

死の恐怖を味わった。

森を巧みに利用したヤザンは10機以上の候補生達を手球にとった。

ミノフスキー粒子が濃くレーダーが効かないその森では有視界で戦闘をするしかない。

ダメージ判定を受けると機体のその部位は機能を停止する。

まず候補生達は足を徹底的に狙われた。

堪らずに飛んで空に逃げれば目立つその機を

ビームライフルが恐ろしいくらいの正確な射撃で襲う。

射線を見て仲間がヤザン機がいると思われる場にくれば既に姿はなく、

背後からジェムズガンの膝裏をビームサーベルで切り裂かれた。破損判定。機能停止。

ジェムズガンが膝から崩れ落ちてオートバランサーが辛うじて踏ん張った。

そして、

 

「ハッハッハッ!手篭めにしてやるよ!」

 

ヤザンは男の獣性を全開にして女に襲いかかる。
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