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ヤザン・リガミリティア
置き去りにされた獣
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それを短くない付き合いになってきたオリファー・イノエは理解した。

ややカチンときて、それなら…とばかりに無遠慮にビームサーベルを抜刀した。

振りかざすことはせず突きの形でバーニアを吹かす。

 

「はっ!いいじゃないか。そうだ、殺気を漲らすぐらいで丁度いいんだよ貴様は!」

 

サーベルも模擬戦用に低出力になっていはいるが、

それでもコクピットに直撃すれば下手をすれば大火傷だ。

だが、隊長機の外部スピーカーから聞こえる男の声は嬉しそうですらある。

 

「隊長…お覚悟!」

 

「甘いってんだよ!」

 

オリファー機の刺突が空を突く。

バーニアの補助無しに関節をバネのようにし力学的に完璧なタイミングで跳躍した隊長機は、

MSの脚力だけでオリファー機の腕を踏み台にする。

 

「なんだってぇ!?」

 

そんな無茶苦茶な。

オリファー・イノエは思わずトレードマークのメガネをずり落っことしそうになりながら、

そして自機の頭部を思い切り蹴り上げられた衝撃で本当にメガネを落とした。

 

ドシィーンというけたたましい音を響かせてジェムズガンが倒れ、

そして蹴り上げた隊長機は見事に着地していた。

コクピットハッチを開けて2機の訓練を観ていたジェムズガン達…

その内の1機のパイロットが涼やかな女の声で叫んだ。

 

「隊長!ちょっと、やりすぎですよ!」

 

コクピットから乗り出した女の姿は長身で、パイロットスーツから覗く肌は浅黒い。

しかしその顔立ちやスタイルは十分に美女というに相応しいものだ。

 

「マーベット、なんだ彼氏の心配か」

 

隊長機から揶揄する返答がきて、

それを周りのジェムズガンもヒュー!等とわざとらしく乗っかってくる。

だがマーベットは慣れたものだった。

 

「違いますよ!ジェムズガンの頭がひしゃげたでしょう!

人間の怪我は放っておいても治るんですからね!」

 

MSはそうはいかないでしょう!

そう続けたマーベットの剣幕に思わず周りの訓練生達も野次を止めた。

勿論、マーベットの発言が照れ隠しなのは言うまでもなく皆見抜いているが…

取り敢えずその剣幕のままに

野次を飛ばした者の所に来られてしまったら恐ろしいのだと男達は尻窄みだった。

それに、取り敢えずマーベットの言は的を得ている。

ゲリラ組織であるリガ・ミリティアは基本、貧乏だ。

世界に冠するあのアナハイム・エレクトロニクスもバックボーンについてくれているが、

それでも表立って堂々と資金を回せない以上豪勢に金は使えない
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