第百一話 残暑を感じてその四
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「されどです」
「そうなりますね」
「失恋で地獄を見た人もいますし」
「自殺した人もですね」
「いますので」
だからだというのだ。
「決してです」
「軽く思わないことですね」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「恋愛はですね」
「軽く見ないで向かい合って」
「正面からですか」
「はい、どうなってもいいと」
その様にというのだ。
「覚悟を決めてです」
「やるものですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「小山さんもです」
「その恋愛の逆ですね」
「まず絶対にです」
「軽く考えないですね」
「正面から全力で、です」
「向かい合うものですか」
「そして幸せになれば喜んで」
速水は言葉を続けた。
「転んでもです」
「あっ、泣くなですね」
「はい、そうです」
まさにというのだ。
「そこが大事です」
「そうなんですね」
「どうなってもですね」
「己を保つことです」
「幸せになっても失恋しても」
「そうです、喜んでも我を忘れず」
咲にさらに話した。
「特に失恋しても」
「泣かないことですか」
「それが大事なんですね」
「そうです、覚えておいて下さい」
「そうします」
咲は速水に真面目な顔と声で頷いて応えた。
「本当に」
「いや、まことに失恋はです」
これはというのだった。
「トラウマになりかねないので」
「だからこちらにもよく来られるんですね」
「恋愛のことを占ってもらい」
「それで、ですね」
「中には失恋の後で」
まさにその後でというのだ。
「どうしたらいいかとです」
「占ってもらいたい人も来られますね」
「失恋で性格が一変した人もいれば」
そのショックでだ。
「トラウマになった人もいて自殺もです」
「そうした人もですね」
「実際にいます、ゲーテの作品で」
ドイツ文学にその名を残す巨人である、小説だけでなく詩も残しかつ政治家としても知られた人物である。
「若きウェルテルの悩みはです」
「あっ、失恋して」
「自殺するお話ですね」
「そうですね」
「ああしてですか」
「本当にそうした人がいますので」
失恋のショックで自殺する人がというのだ。
「決してです」
「軽く見られないですね」
「はい」
まさにという返事だった。
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