第十九話 友情その十
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庚は考える顔になってだ、牙暁に答えた。
「彼がそう思うならね」
「いいですか」
「ええ」
こう答えたのだった。
「それでもね」
「そうですか」
「私の本音はね」
「あくまで、ですね」
「姉さんにあるから」
それでというのだ。
「どうにしかしてね」
「お救いしたいですね」
「実は地球はね」
庚は牙暁に話した。
「人間が何をしてもね」
「その表面だけのことですね」
「卵で言うと殻のね」
「そこだけのことで」
「そこから下はよ」
「卵なら割れると終わりですが」
「地球はそこからも何層もあるから」
「核までに」
「人間は核には辿り着けないわ」
到底、そうした言葉だった。
「だからね」
「それで、ですね」
「もうね」
それこそと言うのだった。
「人間が地球を死なせることはね」
「出来ないですね」
「地中の少ししか辿り着けていないのよ」
「深い地球の」
「本当に表面だけで何かをしている」
「そうでしかないですね」
「かつて恐竜が栄えて」
今度は太古の話をした。
「そうして隕石で滅んだというけれど」
「恐竜が滅びる様な隕石でも」
「そしてそれ以前のカンブリア紀だったかしら」
恐竜の時代よりも遥かに以前の話もした。
「あの頃にしてもよ」
「多くの生きものが絶滅した様ですね」
「どちらもそれだけのことがあったけれど」
「地球に今も命はあります」
「人間の力は知れたものよ」
極めて率直な言葉だった。
「それでどうしてもね」
「特にですね」
「何もないわ」
「地球から見れば」
「そして人間を滅ぼすなら」
そうするならというのだ。
「他の命もよ」
「滅ぼしますね」
「人間を滅ぼして何故地球を護るか」
その根本を話した。
「それはね」
「人間が諸悪の根源であり」
「地球とそこにいる他の命を護る為ね」
「その人間から」
「けれどそこで他の多くの命まで滅ぼすなら」
「本末転倒ですね」
「颯姫はこのことをわかっていないけれど」
地の龍の一人である彼女はというのだ。
「結局はね」
「そうした考えになりますね」
「地球の悲鳴もね」
人間により傷付けられて出すそれもというのだ。
「結局はね」
「表面だけのことですね」
「ええ、それで人間を滅ぼしても」
「実は護るべき多くの命を奪い」
「また新たな命が生まれるから」
「違いますね」
「ええ、結局人間はそんなものなのよ」
庚は今度は達観した様に言った。
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