暗躍編 真凛・S・スチュワートという女 後編
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戻され、熱く桃色に染まり行く柔肌。その隅々から滲み出る瑞々しい汗が真凛の肉体を淫らに彩り、極上の色香を全身に纏わせて行く。
エンジンの躍動に合わせて乳房と桃尻が弾むたび、輝く汗が柔肌を舐めるように滴っていた。スリットによって強調される白い太腿から、ピンと伸びたハイヒールの爪先まで滴り落ちて行く汗の雫が、長くしなやかな美脚を厭らしく撫でている。
「……次は地獄で逢いましょう」
そのままエンジンを全開にした真凛は、ハンドルを強く握り締めると――山地の方へと振り返る。これから自爆する研究所と運命を共にするノバシェードの構成員達は、その遺体すら残らないのだ。
そんな彼らへのせめてもの手向けとして、真凛は妖艶な唇を僅かに開き、小さく呟いている。いつかは自分も、同じ地獄に堕ちるのだと。
やがて彼女は愛車と共に、猛スピードで山地から走り去って行く。研究所を跡形もなく焼き尽くす爆炎の業火が、天を衝く轟音と共に外の世界へと噴き出したのは、それから間も無くのことであった。研究所の自爆機能が、ついにタイムリミットを迎えたらしい。
猛烈な馬力で砂塵を巻き上げながら、森林部の山道を疾走する真凛の後ろでは、激しい爆炎が凄まじい勢いで広がっていたのだが――その猛火が彼女の背中に届くことはなかった。
「ふふっ……生憎だけど、私はまだ死ねないのよ」
すでに最高速度に達していた青いクラシックバイクは容易く爆炎から逃げ切り、主人を「安全地帯」に連れて行ってしまったのである。
◆
その後――ギルエード山地で起きた謎の爆発事故に対応するべく、現地の警察隊と消防隊が緊急出動していた。
黒煙を上げる山岳地帯を目指して、慌ただしく森林部を駆け抜けて行く無数のパトカーと消防車。その様子を遥か遠方の崖上から見下ろしていた真凛は、愛車に跨ったまま鋭く眼を細めていた。
(救国の英雄と謳われたジークフリート・マルコシアンが軍部を去ってから11年。大衆から絶大な支持を集めていたカリスマ的存在を失ったこの国の情勢は、長い間不安定なままになっていた。現政権に移行してからは安定に向かい始めているようだけれど、今でも治安が劣悪な地域は多い。……なるほど、ノバシェードの隠れ蓑にはうってつけだったようね)
11年前の2009年に起きた、旧シェードの改造人間達による侵略行為。その魔の手から祖国を守り抜き、救国の英雄と称賛されたジークフリート・マルコシアン大佐が陸軍を去って以来、この某国は長きに渡る混迷期を迎えていた。その長期的な混乱を利用し、ノバシェードの構成員達はこの国に紛れ込んでいたのだろう。
首都近くの山地にまで大規模な研究所を構えていたくらいなのだから、それ以外の至るところにもアジトを隠している可能性がある。軍や警察の監視が満足に
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