第七十九話 夏の終わりでその十三
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「だからな」
「それでなのね」
「もうな」
それこそというのだ。
「そんなことはな」
「ないのね」
「そうした雑誌にあってもな」
「現実はないのね」
「そうだよ、安心しろよ」
「明男私に何も思ってないのね」
「逆に言えばかなもだろ」
かな恵に言い返した。
「あいつにそういう感情ないだろ」
「ないわ」
全くという言葉だった。
「私は鳴海っちだけだし」
「そうだろ」
「だって小さい時からずっと一緒で」
「家族でな」
「それでね」
そうした間柄でというのだ。
「別にね」
「何も思うことはないだろ」
「家族だっていう以外はね」
「そうだろ、かなもそうだしな」
「明男もなのね」
「そうだよ、それでな」
だからだというのだ。
「別にな」
「雑誌のことは気にしないことね」
「そうだよ」
こう言うのだった。
「じゃあかな恵光源氏はどう思うんだよ」
「ロリコンでマザコンで女好きの」
「節操ないって思ってるだろ」
「ほんまないやん」
源氏物語の主人公である彼はというのだ。
「恋愛絵巻って言うたら体面はええけど」
「その実はだよな」
「もう下半身に人格がない」
「とんでもない兄さんだよな」
尚晩年の人生の深みを知った源氏の君も作品後半には出てきてこちらはこちらで独六の魅力を見せている。
「はっきり言って」
「それで源氏物語読んでたら」
「読む男の人皆かよ」
「ロリコンでマザコンで女好きの」
「お父さんの奥さん義理のお母さんが好きなのかよ」
「それないわよね」
かな恵も流石に引いて答えた。
「やっぱり」
「あるにしても滅多にない話だろ」
自分の義母と恋愛関係に陥るなぞというのだ。
「子供だって出来てるしな」
「そのお子さんが帝になられて」
「そりゃ源氏の君も皇室出身でな」
「血筋は問題ないね」
万世一系のそれは守られているというのだ。
「そっちは」
「けれど帝しかも自分のお父さんの奥さんだからな」
「確か側室さんで」
「正室さん皇后じゃなかったよな」
「そうだったと思うわ」
「まだ何か洒落になってない線は越えてないか?」
「越えてない?」
かな恵はこう返した。
「その頃は側室さん大勢いるのが普通でも」
「それなりの立場の人だとな」
「特に皇室の方で帝になられたら」
「それでもか」
「うん、流石に人妻さんで」
「自分のお父さんの奥さんでな」
「お義母さんにあたる人と、って」
こう鳴海に言った。
「だから作品の中で罪の意識感じてるね」
「感じても遅いよな」
「そうだけれどね」
かな恵も否定しなかった。
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