第四章
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「まるで幽霊の街ですが」
「その幽霊がな」
「絵になります」
「これはいい」
実にというのだった。
「これで決まった」
「書かれますか」
「次の作品はな」
「京都の幽霊をですね」
「書こう」
「それでは」
「東京に帰れば書く」
笑顔で言いそうしてだった。
柏木は一旦旅館に帰った、この日はそのまま寝たが翌日四条を取材で行くと今度は妙齢の赤と桃色の着物を着ただった。
草履の美女がいてパラソルをさしていたがこの女性もだった。
影がなかった、女性はしずしずと歩いていたが。
ここでだ、柏木はこの言葉を出した。
「優雅、いや違うな」
「また幽霊に出会いましたが」
「幽雅だな」
こう緒方に話した。
「これは」
「幽雅ですか」
「そう思った」
「そうですか、確かにですね」
言われてみればとだ、緒方も頷いた。
「優雅ですが」
「幽霊だからな」
「そう言っていいですね」
「そうだな、だが」
「だがといいますと」
「誰も何も言わないのか」
首を傾げさせてだ、柏木は緒方にこんなことも言った。
「わし等は京都にいてもう三度もだ」
「幽霊を見ていますね」
「これだけ会っているのにだ」
それでもというのだ。
「誰もだ」
「不思議に思わないのか」
「そうだ、それがな」
「あれじゃないですか?」
緒方は少し考えてからだ、柏木に答えた。
「私達はたまたまです」
「たまたまか」
「影を見てです」
「それで気付いたか」
「ですが大抵の人はです」
「影まで見ないか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「これといってです」
「誰も気付かないか」
「そうではないでしょうか」
「そういうものか」
「こうしてです」
緒方は今度は四条の道の左右に連なる店達を見た、土産ものを売る店だけでなく他にも色々な店が並んでいる。
「店の窓がガラスみたいですね」
「ああ、本当にな」
柏木もその通りだと頷いて応えた。
「全く以てな」
「ほら、あの人は」
その幽霊の着物にパラソルの貴婦人を見て話した、丁度ショーウィンドウの店の前を通っていたが。
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