第三章
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「そしてな」
「整った外見ですし」
「そのうえで幽霊だからな」
「絵になりますね」
「随分とな」
「そうですね」
「これが京都か」
柏木は唸って言った。
「そうした話は多いが」
「この目で見るとは」
「思わなかった、しかしな」
「それでもですね」
「これはいいものを見た」
こう言うのだった。
「まことにな」
「創作のヒントを得ましたか」
「ああ」
柏木は緒方に答えた。
「そうなった
「そうですか」
「ああ、では東京に帰れば」
「この幽霊をですか」
「それはまだわからない」
この時は柏木はこう言うだけだった、だが。
この夜二人で祇園に出てそうして京都の馳走を飲んで食べた、京都独特の一見さんお断りの見事な料亭でだった。
見事な料理に酒を楽しんだ後で夜の街に出てだった。
夜の古都も観て楽しんだ、ここで柏木は緒方に話した。
「昼の竹林のな」
「あの幽霊はですね」
「絵になった」
「そうですね」
「いいものだ、本当にな」
「作品の題材にですね」
「すべきか」
こう言うのだった、かなり飲んで食べて満足している中で話した。
「やはりな」
「そうですね」
「ああ、しかし」
「しかし?」
「若し縁があるのなら」
それならとだ、柏木は話した。
「ここでもな」
「会えますか」
「そうかもな、夜の祇園でな」
この場所でというのだ。
「あの幽霊と会えれば」
「これまたいい作品の題材ですね」
「それになるな」
緒方にこんなことを言った、その時にだった。
前から舞妓が来た、その舞妓を見ると。
夜の灯りの中、左右に連なる古い日本の街並みから出る灯りに照らされていたがその舞妓の足下を見るとだった。
この舞妓も影がなかった、それで柏木は言った。
「これまたな」
「幽霊ですね」
「本当に幽霊が多いな」
「まるで幽霊の街です」
「お昼に幽霊に会って」
そしてというのだ。
「こうしてな」
「夜にですね」
「また会うなんてな」
「今度は舞妓の幽霊ですが」
「絵になるな」
「はい、京都の街に美女の幽霊とか」
「それも和風の」
緒方も応えた。
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