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夜雀バラード
第三章

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「そういわれていますね」
「何でもないよりですね」
「ある方がです」
「賑やかになりますね」
「そして寂しくなくなります」
「だから枯れ木もですね」
「山にあるとです」 
 それならというのだ。
「賑やかになります、そして妖怪もです」
「不吉とされるものでもですね」
「いればです」 
 そして鳴けばというのだ。
「それだけです」
「寂しくなくなるんですね」
「そういうことです」
「成程、そうですか」
「実際に寂しくなくなりましたね」
「はい」
 微笑んでだ、潤奈はマスターに答えた。
「鳴き声を聞いて」
「そうです、不吉とされる妖怪でも」
「こうしてですね」
「時としてです」
 潤奈にカクテルを出しつつ話した、今度はスクリュードライバーだった。
「寂しさをです」
「紛らせてくれますか」
「常に不吉でもないです」
 妖怪はというのだ。
「そうだとされている妖怪でも」
「時としてですね」
「寂しさをです」
「紛らせてくれますね」
「そうです、それで寂しさが消えましたら」
 マスターは潤奈にさらに話した。
「これからは」
「失恋は完全に忘れて」
「そうしてです」
 そのうえでというのだ。
「新しい恋があれば」
「それに会えばですね」
「楽しまれてはどうでしょうか」
「そうですね」
 潤奈はマスターの言葉に微笑んで応えた。
「出会いがあれば」
「それがあれば」
「楽しく過ごします」
「そうされますね」
「絶対に。じゃあこれを飲んだら」 
 そのスクリュードライバーを手に話した。
「お店を出て」
「そうしてですか」
「部屋に帰って」
 マンションのそこにというのだ。
「そうしてシャワーを浴びて歯を磨いて」
「そうしてですか」
「寝ます」
 そうするとだ、マスターに答えた。
「そうします」
「それは何よりです」
「はい、あとこのお店に来たのははじめてですが」
 潤奈はこうも言った。
「またです」
「来て頂けますか」
「そうしていいですか?」
「勿論です」
 笑顔で答えたのだった。
「是非そうされて下さい」
「それでは」
「はい、では」
「これも頂きます」  
 笑顔で言ってだった。
 潤奈は今は酒を飲んだ、そうして夜雀の鳴き声を聞いた。それは決して不吉なものではなく寂しさを消してくれる心地よいものだった。


夜雀バラード   完


                   2022・10・11
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