第三章
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「悪いことじゃないね」
「そうした考えもあるね」
「そうだね」
「ふむ、ではお前さんの話の通りにしてみよう」
お婆さんは狼の言葉に頷きました、そうしてです。
胡桃の実の種を蒔きました、すると忽ち種達から芽が出てです。
それかすくすくと育って木になってその木の全てに実が実りました。お婆さんのお家の周りは全て胡桃の木で覆われてです。
とても沢山の胡桃の実が採れて皆食べられる様になりました、こうして皆満足しましたがお婆さんはまだこう言うのでした。
「いいかい?食べてもいいけれどね」
「ああ、胡桃の木は全部お婆さんの家のものでな」
「それで実もだからだな」
「持って帰ったらいけないな」
「それは駄目だな」
「そうだけれど食うことはね」
このことはというのです。
「いいからね、どんどん食ってくれよ」
「わかったよ、じゃあな」
「そうさせてもらうな」
「わし等は食えればいいからな」
「美味い胡桃の実をたらふくな」
村の人達は笑顔で言ってでした。
お婆さんの胡桃の実を喜んで食べました、その様子を見てです。
狼はお婆さんにです、笑顔で言いました。
「どうだい?木が沢山あったらな」
「それだけ沢山の実が実ってだね」
「皆食えてな」
「いい思いをするね」
「そしてだよ」
狼はさらに言いました。
「皆いつもたらふく食えるなら持って帰ろうなんてな」
「言わないし思わなくなるね」
「だからな」
「いいんだね」
「誰も一杯あっていつも食えるならな」
それならというのです。
「持って帰って自分のものにしようとかな」
「思わないんだね」
「そうさ、少しだけ持つよりもな」
「沢山持つ方がいいんだね」
「そうだよ、じゃあな」
「これからもだね」
「胡桃の木達を全部大事にしてな」
そうしてというのだ。
「実を実らせて」
「村の皆と一緒にだね」
「たらふく食えばいいさ」
「そうするね、じゃああんたもだね」
「ああ、いただいていいかい?」
「勿論だよ」
お婆さんは狼に笑顔で応えてでした。
狼に胡桃をお皿に山盛りで出しました、狼はその胡桃の実を喜んで食べました。胡桃にまつわるカルフォルニアの古いお話です。
尾長狼 完
2022・12・11
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