第一章
[2]次話
朝三暮四
中国の東周時代日本で言う春秋戦国時代のことである。
宋に狙公という者がいた、白く長い髭に中背の痩せた身体の男で家に多くの猿達を飼って使用人の様に家事もさせていた。
彼は猿と話が出来心を通わせることも出来ていた、その彼がだ。
ある日猿達を見てだ、自分と同じ白髪頭の妻に言った。
「太ったな」
「そうなの」
「うむ、皆な」
「私にはわからないけれど」
「そんなに食べさせているか」
首を捻りながら言った。
「果たして」
「食べ過ぎかっていうのね」
「そうだろうか」
「どうかしらね」
「少し見てみるか」
こう言ってだ。
狙公は猿達の食事の木の実を見た、するとだった。
特に多くなかった、これまでと同じだった。
しかしだ、朝と暮の食事を見て思ったのだった。
「暮の実が多いか」
「そうなの」
「そして朝は少ないか」
こう妻に言った、猿達にやる食事を見て。
「朝は栗だと三つでな」
「暮は四つね」
「暮になるとな」
狙公は考える顔で言った。
「後はもう寝るだけだな」
「私達もね」
妻も言った。
「朝から呉まで働くけれど」
「それで身体を動かしてな」
「そうしてるわね」
「そういえば猿達はいつも言う」
狙公は彼等の話を思い出した。
「日中は腹が減るとな」
「それでも太ってきてるのね」
「それで不思議に思っていたが」
「やっぱり身体を動かさないと」
そうなると、とだ。妻は夫に話した。
「太るわよ」
「そうだな」
「誰でもね」
「たらふく食ってな」
「暮に沢山食べて寝たら」
妻はさらに言った。
「その分ね」
「太るか」
「幾ら日中働いていても」
朝から暮までというのだ。
「そうなるんじゃないかしら」
「そうか、ならな」
狙公は妻の言葉を聞いて言った。
「餌の量を変えてみるか」
「それで痩せさせるの?暮減らして」
「そうだ、その代わり朝にやる分は増やす」
こう妻に話した。
「これまで栗だと朝三暮四だったが」
「それをどう変えるのかしら」
「朝四暮三にするんだ」
「正反対にするのね」
「そうだ、そうしてな」
そのうえでというのだ。
「やってみるか」
「そうしてみるのね」
「朝沢山食ったら日中腹が減ったと言わないな」
「働いてもね」
「それで暮の量を減らすとな」
食べるそれをというのだ。
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