第六章
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孫にその人を紹介されたが表情は特に変わらなかった、その上で妻に孫と彼女が帰ってからこんなことを言った。
「美人さんだったな、確かに」
「それだけ?何か幹夫さんと少し反応しただけで」
「終わったか」
「あれだけ美人さんだからスケベ心でもね」
「起こるか、もう歳だぞ」
「若い頃は浮気はしなかったけれど違ったのに。それに男の人って歳を取っても」
「漫画だろ、それは」
妻にも創作と現実の違いを話した。
「実際はな」
「それはないのね」
「あるか、もうどんな人を見てもな」
「何も思わないのね」
「若い頃は元気だったからな、けれどな」
それがというのだ。
「歳を取るとな」
「それもなくなるの」
「そうだ、若い頃みたいに元気な爺さんがいるか」
「いないわね、私だって最近は腰も膝も痛いし」
「元気じゃないだろ」
「若い頃と比べるとね」
「そんなものだ、もう七十を過ぎるとな」
そうなると、というのだ。
「幹夫君も五十過ぎだろ、五十を過ぎてもな」
「衰えるのね」
「漫画みたいなスケベ爺がいるか、だからわしもな」
自分もというのだ。
「確かに美人さんだったが」
「それで終わりね」
「そうだ、幹夫君はわしより反応したらしいが」
それでもというのだ。
「それでもすぐにな」
「あなたみたいになるの」
「男がそうしたことに興味があるのは若い頃だけだ」
小羽は断言した。
「歳を取るとな」
「興味がなくなるのね」
「衰えてな、そういうものだ」
「そういえば夜なくなったわね」
「たまにだろ」
「ごくごくね」
「だからない、だからな」
そうした状況だからだというのだ。
「あの人にもそれで終わりだ」
「美人さんだな、だけで」
「もう枯れたんだ、スケベ心も色気もな」
「何もないのね」
「ああ、じゃあ金魚達にご飯あげて散歩に行って来るな」
笑顔で言ってだった。
小羽はその様にした、金魚にご飯をあげる時も散歩に行く時も彼は笑顔だった。関心は明らかにそちらにあった。
そんな爺いるか 完
2023・5・30
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