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第十九話 友情その五

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「牙ちゃんはね」
「夢見で悪いものを見たら」
「そうならない様にね」
「人に言えばいいんだね」
「そうよ、少なくとも信じてもらえるわよね」
「信じてもらえるっていうと」
 それはとだ、牙暁は応えた。
「それは」
「ほら、ギリシア神話であるよね」
「あの神話。確か」 
 そう聞いてだ、牙暁は言った。
「カサンドラだったね」
「あの人は予言をしても信じてもらえなかったね」
「そうだったね」
「それで可哀想なことになったよね」
「あの人は」
 確かにとだ、牙暁も頷いた。
「ギリシア神話にはそうしたお話が多いけれど」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「あの人みたいにならないから」
「いいんだ」
「誰からも信じてもらわないって辛いよ」
 非常にとだ、北都は話した。
「それでもね」
「僕は信じてもらえるから」
「夢見をね、悪い夢であっても」
「皆僕のお話を聞いてね」
「信じてくれるよね」
「だからだね」
「そのことをいいと思ってね」
 そのうえでというのだ。
「これからはね」
「夢見で見る運命を道標と思って」
「それでね」
「人がいい運命を辿る様にしていく」
「そうすればいいんだよ」
「そうなんだね」
「そう、未来は本当にまだ何も決まってないから」
 両手を後ろに組んでにこりと笑って首をやや右に傾けさせてだ、北都は言った。まるで牙暁を励ます様にして。
「だからね」
「そうしていけばいいんだね」
「そうだよ、少なくとも彼がね」
「添え星となる」
「聞いてくれるよ」
「彼ならだね」
「私は彼は今の時点で大丈夫だと思うけれど」
 それでもというのだ。
「牙ちゃんが心配ならね」
「彼の夢に出て」
「それで言えばいいよ」
「注意する様に」
「そうすればね」
「そうなんだね、そう言われてもまだね」
「牙ちゃんもそうだって言えないよね」
「果たしてどうか」
 目をやや開いてやや俯いてだ、牙暁は答えた。
「それは」
「うん、まだ確信は持てないよね」
「北都さんのことがずっとね」
「そうだよね、けれど徐々にでもね」
「北都さんの言うことに頷けたら」
「そうしてくれて」
 そしてというのだ。
「そのうえでね」
「そう出来たらだね」
「いいから。徐々にね」
「そうした考えになればいい」
「そうよ、それでね」
 そのうえでと言うのだった。
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