暗躍編 真凛・S・スチュワートという女 中編
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がどれほど非力であるか。真凛は己の人生を通して、それを嫌というほど「肌」で理解して来た。
だからこそ。何があっても、何をされても決して屈しないために。そんな理不尽に負けないために、特務捜査官として戦い続けて来たのだ。その地位を失ったところで、今さら改造人間達との戦いから降りるわけには行かないのである。
(悪に堕ちた改造人間は、人の姿と知性を持った猛獣に過ぎない。そして、猛獣相手に人間の道理は通用しない。ならば私達人間も、相応の「作法」を以てそれを制するのみ)
その苛烈な信念を、豊満な胸の奥に宿して。彼女は露出している太腿に装備していたナイフを引き抜くと、その切っ先を容赦なく男達に向けていた。足を止めた瞬間、彼女の爆乳と爆尻がぶるんっと上下に弾む。
「例え兵器としては欠陥品でも……やはり改造人間は改造人間。その厄介な力は決して軽く見ていいものじゃない。だから……『相応の措置』を取らないとダメね?」
「なっ……!?」
刃を向けてくる真凛の眼は、脅しのそれではなく。ただ淡々と標的の命を奪わんとする、殺し屋の色を湛えていた。その眼を見た戦闘員達は戦慄し、青ざめる。
この女は、自分達をこの場で全員殺すつもりなのだと。
「ま、待て! 待ってくれ! た、確か貴様は対策室の特務捜査官なんだろう!? 俺達を捕まえることが任務のはず……!」
「……だから命だけは助かる、とでも? 当てが外れたわね」
「待っ――!」
真凛がすでに対策室を去ったフリーの女探偵であるとは知らず、命乞いを始める男達。彼らの言葉を遮る冷酷な一言と共に、真凛は男達の喉首にナイフを投げ付けるのだった。
「ぎゃあっ……!」
「や、やめっ……がっ!」
矢の如く飛ぶ刃が彼らの急所に突き刺さり、鮮血の飛沫が上がる。だが、遠距離からナイフを投げている真凛にその返り血が降り掛かることはない。彼女の足元だけが、血の海に染め上げられて行く。
「……人であることを捨てておいて、まるで人間のような悲鳴を上げるのね」
その眼にも、所作にも躊躇は無い。まるで流れ作業のように迷い無くナイフを投げる彼女は、畜生にも劣る汚物を見る眼で、死に行く男達の最期を見届けていた。
「き、貴様ァッ! それでも特務捜査官か!? 無抵抗の相手にこんな真似をッ……!」
「そう言うあなた達は、無抵抗の人間に情けを掛けたことが一度でもあるのかしら。そんな記録を読んだ覚えは無いのだけれど」
「あ、『悪魔』めぇッ……!」
「ふふっ……あなた達からそんなことを言われるとはね。褒め言葉として、ありがたく受け取るわ」
やがて、最後の1人が悔し紛れに恨み言を吐き出すのだが。真凛はそんな彼からの罵声すら、「褒め言葉」と称して嗤っていた。
「あがッ……!」
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