第七十九話 夏の終わりでその三
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「あんたも鳴海君も奥手ね」
「そう言うけれど」
娘はその母に眉を顰めさせ口をへの字にさせて応えた。
「そういうことってまだね」
「早いっていうのね」
「同級生にしてる娘いるみたいだけど」
「キスとかでしょ」
「もっと先のそうしたことまでね」
かなりオブラートに包んで話した。
「してる娘いるらしいけれど」
「あんたも鳴海君もよね」
「とてもね」
それこそと言うのだった。
「そこから先はね」
「そうよね、手をつないで」
「そこから先は無理よ」
「明男にしてもね」
母は今度は息子かな恵から見て弟である彼のことも話した。
「あの年頃だから頭の中はそうしたことで一杯でもね」
「それでもなのね」
「あの子はあの子で臆病っていうか」
「へたれっていうの」
「それね、まあ暴走してね」
「変なことするよりましよね」
「ええ、そうだけれどね」
犯罪に走るよりはというのだ。
「それやったら終わりだから」
「それだといいでしょ」
「けれどよ」
それでもとだ、母はかな恵に話した。
「ある程度でも積極的によ」
「いってもいいの」
「そうよ」
こう娘に言うのだった。
「本当にね」
「じゃあキスから先も」
「お母さんまだお祖母ちゃんになるつもりないから」
これが母の返事だった。
「ちゃんと知識あるでしょ」
「あるなら使えってことね」
「そういうことよ」
まさにというのだ。
「要するにね」
「妊娠しなかったらいいのね」
「そうよ、そうした知識も必要でしょ」
「現実としてね」
かな恵も否定しなかった。
「やっぱり」
「妊娠だけじゃないからね」
「病気ね」
「甘く見ないことよ」
母は娘に真顔で告げた。
「そうした病気はね」
「死ぬこともあるから」
「エイズや梅毒はね」
こうした病気はというのだ、母は娘に対してこのことは余裕はなく真剣な顔で語っていくのだった。
「死ぬからね」
「そうよね」
「梅毒なんてね」
特にこの病気のことを言うのだった。
「結構沢山の人が亡くなってるから」
「今でも」
「昔はそれこそよ」
「助からない病気だったのよね」
「新選組でもなった人が結構いて」
「それで亡くなった隊士の人もなの」
「いた筈だから」
隊内での粛清や戦いの中で死んだ者も多いがだ、初代局長であった芹沢鴨もこの病気に罹っていたという説がある。
「吉原なんてよ」
「梅毒でかなり亡くなってるのよね」
「漫画でもあったでしょ」
「ドラマでもね」
そちらにもなった医学の漫画である。
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