第七十九話 夏の終わりでその一
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第七十九話 夏の終わりで
かな恵は家にいた時に母に聞かれた。
「あんた最近鳴海君とどうなの?」
「どうって毎日携帯でお話したりラインでやり取りしてるわよ」
自分のスマートフォンでとある料理のサイトをチェックしながら答えた。
「そうしてるけど」
「それだけ?」
「それだけって何よ」
母に自分が座っているテーブルの席から言葉を返した。
「鳴海っちもラグビーの部活やっててアルバイトもね」
「やってるの」
「近所の喫茶店でね」
そこでというのだ。
「やってるわよ」
「それであんたも料理部の部活にアルバイトね」
「今はホテルのプールでね」
海の家からというのだ。
「お互い忙しくてね」
「たまには会いなさい」
母は素っ気なく何でもないと言う娘にこう言った。
「そうしなさい」
「そうしないと駄目なの」
「夫婦でもそんな風だと離婚するから」
「所謂擦れ違いね」
「そうなるからよ」
だからだというのだ。
「会って来なさい」
「鳴海っち浮気しないけれど」
「あんたもっていうのね」
「だったら毎日やり取りしていたら」
「そういう安心が駄目って言ってるのよ」
母はシビアな顔と声でまた言った。
「だからよ」
「鳴海っちに合って」
「デートしてきなさい」
「そうなの」
「そうよ、鳴海君みたいにいい子いないから」
彼を幼い頃から知っているからこその言葉である。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、もうね」
それこそというのだ。
「あの子とね」
「会ってなの」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「楽しくよ」
「遊んでくればいいのね」
「そうよ、何ならね」
母は強い声でこうも言った。
「お家にも行っていいわよ」
「鳴海っちのお家なんて子供の頃からいつも言ってるじゃない」
これまた素っ気ない顔でだ、かな恵は母に返した。
「おじさんおばさんにもよくしてもらってるし」
「お部屋に行っていいって言ってるのよ」
「お部屋もいつも言ってるし」
「全く、わからない娘ね」
母は素っ気ないままの娘にやや目を怒らせて返した。
「手をつなく関係から先にいってもいいって言ってるの」
「ってまさか」
「キス位はいきなさい、あんたも奥手ならね」
「鳴海っちってそこからはね」
「いかないわよね」
「あれで純情だからね」
鳴海のそうした気質をわかっているからこその言葉だ。
「それでね」
「そうよね、けれどね」
「そこをなの」
「そうよ、もっとね」
「私は前に出て」
「それでね」
そのうえでというのだ。
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