第二章
[8]前話
「全てを清めるというか」
「日本人の感覚ではですね」
「入っても清められるとは」
「昭和の頃の八尾の川みたいですね」
「八尾ですか」
「実は私そっちの生まれでして」
大阪府八尾市のというのだ。
「それで言いました」
「そうですか」
「もっと言えば八尾の川よりも)
昭和の頃のというのだ、この頃は産業排水や生活排水で日本の川も汚いことが多くこの街もそうだったのだ。
「そうですね」
「だからですか」
「ですがヒンズー教ではです」
この宗教ではというのだ。
「そうした信仰です」
「水は全てを洗い流す」
「ですから」
そう考えられているからだというのだ。
「インドの人達はです」
「川に入っていますね」
「そうです、皆さんもよければ」
笑顔でだ、ガイドは言った。
日本に帰ってからだ、恭太郎は梨沙子に尋ねられた。
「あんたガンジス川入ったの?それで」
「僕も誰も入らなかったよ」
恭太郎は梨沙子に答えた。
「ガイドさんもね」
「そうなのね」
「お水は全てを清めるっていうけれど」
それでもというのだ。
「流石にね」
「ガンジス川は違ったのね」
「奇麗になるっていうか」
ガンジス川はというのだ。
「僕達の感覚だとね」
「逆によね」
「病気になりそうで」
それでというのだ。
「止めたよ」
「そうなのね」
「こう言ったらインドの人達には失礼でも」
「あの川のお水を見たら」
「そう思ったからね」
奇麗になるどころかというのだ。
「下手に川のお水がお口に入ったら」
「生水は飲まない方がいいのよね」
「そうも思ってね」
「そう考えたらそれでいいと思うわ」
梨沙子はそれならと応えた。
「あんたがね、実際あそこの川のお水は有名だし」
「ああだって」
「入ったら凄く匂いがするそうだし」
「入らなくて正解かな」
「少なくともあんたヒンズー教徒じゃないしね」
このこともだ、梨沙子は言った。
「うち浄土宗でしょ」
「そうだしね」
「じゃあね」
「それならそれでいいね」
「ええ、それでインド旅行はどうだったの?」
「色々あって楽しかったよ」
笑顔でだ、恭太郎は答えた。
「本当に何もかもが日本と違ってね」
「楽しめたのね」
「うん、今からそのこと話していいかな」
「お願いするわ」
梨沙子も笑顔で応えた、そうしてだった。
恭太郎はそれを受けてインド旅行の話をした、そうすると話す方も聞く方もお互いにとても楽しい時間を過ごすことが出来た。
水は全てを清める 完
2023・5・24
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