第二章
[8]前話
「奥さん妊娠したのか」
「三ヶ月か」
「そうなのか」
「おめでとう」
「いやあ、よかったよ」
知久も笑顔でこのことを言うのだった。
「結婚して早速だから」
「これからは一家三人か」
「それで仲良くね」
「楽しく過ごしていくのね」
「そうなったよ」
こう言う、だが。
同僚達は気付いていなかった、彼がどうにも目が泳いでいて焦っている感じなのを。彼の続いての吉事に祝福することに神経を集中させて。
知久はこのことをよかったと思いつつだった、そのうえで。
家に帰ってだ、妻の玲子他ならぬ妊娠した彼女に言った。
「いや、ばれてないみたいでよかったよ」
「こっちもよ、まさかね」
玲子は夫に苦笑いで応えた。
「妊娠したのがね」
「結婚式のあの日なんてね」
「全く、ついついね」
玲子は夫に対してこうも言った。
「ウェディングドレス着てるから」
「その姿でってね」
「あなた激し過ぎたから」
「思わぬ形で汗かいたね」
「後で大慌てでメイクなおしてもらって」
汗をかいてしまってというのだ。
「汗も拭いてだったけれど」
「メイクの人にも必死に事情隠して」
「お願いしたわね」
「それで式に出たけれど」
「あの時だったわね」
「そうだね、絶対に」
「丁度三ヶ月だし、このことはね」
夫も苦笑いで言った。
「誰にも秘密だね」
「二人だけのね」
「お互いの親にも言えないよ」
「会社の同僚にもお友達にも」
「本当にね」
「生まれて来る子にもね」
まさに誰にもというのだ。
「言わないでいましょう」
「結婚式の時に出来たってね」
「それはね」
夫婦で話した、そして二人はこのことを彼等だけの秘密とした。そのうえで二人の間に生まれた息子それに後で生まれた娘と幸せな家庭を築いたのだった。
結婚式に出来た秘密 完
2024・5・24
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