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犬は耳もいい
第二章

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「ふわりは全然狼に見えないけれどな」
「犬もそれぞれ種類があるからね」
「トイプードルもそのうちの一つなんだよな」
「外見はそうでもね」
 トイプードルの外見は狼のそれと全く違うがというのだ。
「けれどね」
「それでもか」
「やっぱり犬だから」
「元は狼か」
「それで狼がそうだからよ」 
 その耳は人間の八倍よく聴こえるからだというのだ。
「犬もよ」
「耳はいいんだな」
「そうよ、そしてね」 
 それでというのだ。
「さっきもね」
「ふわり目を覚ましたんだな」
「お母さんがしゃもじを落とした音でね」
 まさにそれでというのだ。
「そうなのよ」
「そうなんだな」
「だから犬の周りでやたら大きな音を出すことはね」 
 それはというのだ。
「あまりね」
「よくないな」
「ええ、特にふわりは繊細だから」
 そうした気質の娘だからだというのだ。
「そうしたことにはね」
「気をつけることか」
「そうよ、それでね」
 そのうえでというのだ。
「一緒に暮らしていきましょう」
「そういうことだな」
「ええ、今もね」
 母は息子にドラマを観つつ言った、親子でそうしているがそれぞれ観ているドラマは違う。観る為に用いているものもだ。
「いいわね」
「そうだよな、それじゃあな」
「テレビの音もスマートフォンの音もね」
「調整しような」
「そうしましょう」 
 二人で話してドラマを観ていった、そして。
 ドラマが終わってだ、母は息子に言った。
「今日はお母さんがふわりのお散歩行って来るわね」
「そうするんだな」
「今から行って来るわ」
 母がこう言うとだった。 
 ふわりはすぐに起き上がった、そのうえで今自分がいるケージの中で身体を伸ばしてからケージを出た、そのうえで母に目をキラキラとさせて鳴いてきた。
「ワンワン」
「ちゃんと聞こえてるな」
「だから耳がいいのよ」 
 母も言ってきた。
「犬はね」
「そういうことなんだな」
「じゃあ行って来るわね」
「ふわりも聞いたしな」
「そうしてくるわ」 
 息子にリードを出しつつ応えた、そうしてだった。
 ふわりと一緒に玄関に向かった、それから彼女の首にリードを付けて散歩に出たのだった。今回の散歩も実に楽しいものになったのは言うまでもない。


犬は耳もいい   完


                  2023・5・24
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