第二章
[8]前話
「八条学園に通っていた時は」
「ははは、そうだったな」
修一が笑って応えた、一家の家で夕食を兄弟で鍋を囲みつつ話している。四人の家族は今はそれぞれの家にいる。
「お前の小学校の時の担任だったからな」
「そしてだよ」
修造は困った顔でこうも言った。
「奥さんのお母さんでもあるから」
「お前にとって義母さんだからな」
「そうだよ、だからな」
「お前もあの人が来るとな」
「ついな」
どうしてもとだ、修造は話した。
「俺もな」
「大人しくなるな」
「あの人、お義母さんにだけは苦手だよ」
こう言うのだった。
「だからな」
「それでだな」
「あの人が来られたら」
その如何にも気の強そうな顔を極めて弱いものにさせて話した。
「幾ら俺でもな」
「気弱になるな」
「そうだよ、あの人にだけは勝てないよ」
鍋にある蟹を食べつつ話した。
「俺は」
「お前にもそうした人がいるってことだな」
「どうしてもな」
「そして奥さんにもね」
今度は姉が言って来た。
「あんたお家ではね」
「全く、義母さんそっくりだから」
修造は今度は姉に応えた。
「外見も性格も」
「優しいけれどね」
「怒ると滅茶苦茶怖いからな、俺はそうした人に弱いんだよ」
「それでなのね」
「奥さんもそして娘も」
「同じよね」
「そうなんだよな」
「だからお前家じゃ大人しいな」
修二も言ってきた。
「そうだな」
「ああ、どうしてもな」
「優しいけれど怒ると怖い人はか」
「普段から怖かったりすると平気なんだよ」
そうしたタイプはというのだ。
「本当にな、けれどな」
「それでもだな」
「怒った時のギャップがどうしても駄目なんだよ」
「そうだな、じゃあこれからもな」
「義母さん達の前ではそうだよ」
こう言って蟹だけでなく豆腐や白菜や葱も食べた、そのうえで今は兄弟達を楽しい時間を過ごした。
だが義母である彼女が帰るとだった。
「まただな」
「常務元の強気なあの人に戻られたな」
「本当に時々急に大人しくなるよなあの人」
「そんな人だな」
何も知らない社員達はこう言う、だが真相を知る者達は笑った。あるホテルの些細だが少なくとも当人にとっては重要な話である。
急に大人しくなる常務 完
2023・5・23
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