第一章
[2]次話
急に大人しくなる常務
石川県のとあるホテルで重役をしている佐伯修造は兎角強気で知られている、ホテルの経営にすいてはいつも攻めていけである。
白いものが混ざったオールバックで四角い顔に太い眉そして強い光を放つ小さ目の目に引き締まった口に一八〇のがっしりした体格を持っている。
その彼にだ、強く言うことは社長である彼の長兄の修一も難しいが。
彼はふと大人しくなる時がある、それで社員達も不思議に思っていた。
「常務って時々静かになられるよな」
「いつも強気の人なのに」
「ふとそうなられるよな」
「何かな」
「そんな時あるわね」
社員達のことも気遣い思いやりもあるので人望はある、これは経営陣全体がそうでホテルの経営はホワイトである。
修造はその中で強気であるのだが。
「本当に急にな」
「声が小さくなって」
「言葉数もなくなって」
「そんな時あるな」
「普通に」
社員達はこのことが不思議だった、だが。
長兄で社長の修一も次兄で専務の修二もそれはわかっていた、兄弟三人共外見はそっくりで背丈も同じ位である。
「またあの人来られるな」
「ああ、じゃあ修造大人しくなるな」
「そうなるな」
「またな」
笑いながら話した、そして。
修一のすぐ下の妹で修二と修造から見ると姉にあたる美穂堂々とした目鼻立ちで均整の取れたスタイルに形のいい頭を持つ黒髪を見事にセットした彼女も言った。
「あの人が来られるなら私もよ」
「ははは、お前もな」
「あの人は苦手だからな」
「それでだな」
「あの人が来られるとなると」
「静かになるわ」
こう言ってそしてだった。
美穂は気を引き締めた、そして。
神戸の八条グループ世界屈指の企業グループであるこちらから一人の如何にも温和そうな老婆がホテルに来ただけでだった。
修造は何も言わなくなった、畏まって常に何かに怯えている様に大人しくなった。だが事情を知らない社員達は。
「まただな」
「常務また大人しくなられたな」
「どうもな」
「何も言われないな」
「またこの時が来たけれど」
「本当に何があるのかしら」
普通の社員は首を傾げさせるばかりだった、だが。
事情を知る修一と美穂それに修二は一家で食事をしている時に修造に笑って話した。
「まだあの人が怖いか?」
「貴方もいい歳なのに」
「子供の頃と同じだな」
「仕方ないだろ、子供の時からあの人からお世話になっていてな」
そしてというのだ。
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