攫われたハルト
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ハルトさん、出ないなあ……」
可奈美は口を尖らせながら、スマホをポケットにしまった。
朝起きてから、ハルトの姿がない。
今朝の朝食当番であり、その用意もしっかり終えられていたことから、少なくとも朝方にはラビットハウスにいたことが推測できる。
だが、今は影も形もない。
ココアとチノは学校に行き、タカヒロは休んでいるこの時間。
本来今日はハルトと二人体制なのに、時間になっても彼は戻ってこない。
「ハルトさん、まだ……?」
口を尖らせながら、可奈美はカウンター席に座り込む。
スマホのメッセージにはいまだに既読も付かず、何かあったのではないかと不安さえ襲ってくる。
「あ、ユニちゃんにゴーレムちゃん。……心配だよね」
ハルトの使い魔たち。
そのうち、ガルーダとクラーケンが見当たらない。いつもの通り、ファントムや参加者を探しているのだろうか。
「そういえばユニちゃん、いつもラビットハウスじゃなくてもハルトさんのところに来てるよね? ハルトさんがいる場所、分かるの?」
可奈美の問いに、ユニコーンは困ったように首をひねった。
不安を押し切るように、三回目の掃除を終えたころ、ラビットハウスのベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!」
「あらあら。本当にいましたのね。衛藤可奈美さん」
「あなたは……!」
来客の姿に、可奈美は思わず身構える。
一見、平日の日中には似つかわしくない女子高生。
長い髪を二房に分けて前に出すその姿は、可奈美は初めて見る。だが、その長い前髪で隠れている左目に薄っすらと見える金色の眼から、可奈美は以前戦った参加者のことを思い出した。
「狂三ちゃん……?」
「きひひっ! あらあら、一度戦っただけなのに、覚えていただけて嬉しいですわ」
制服姿の狂三はスカートをたくし上げ、お嬢様のように頭を下げる。
「どうしたの?」
仕事中は、千鳥が手元にない数少ない時間である。
可奈美は懐に手を伸ばす彼女の一挙手一投足を注意していた。
やがて彼女が取り出したのは、銃。
だが、狂三自身が戦闘で使う古めかしい銃ではない。銀で作られたそれは、可奈美もよく知るものだった。
「それって……!」
「今、これの持ち主は行方不明ではなくて?」
狂三はトリガーに指を通してウィザーソードガンをぶら下げる。ゆらゆらと揺れるそれを、可奈美は驚愕の眼差しで見つめた。
「狂三ちゃんが、なんでそれを持ってるの……?」
同時に、ユニコーンがその角を狂三に向けている。
警戒を見せるユニコーンは、そのまま突撃を放ってくる。
だが。
「刻々帝 二の弾」
即、ユニコーンへ発砲された銃弾。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ