特別なキス
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悪いドラゴンとは思えないものだったからだ。
「お前・・・もしかしていい奴なのか?」
ナツさんが確認のために問いかける。しかし、その瞬間にセレーネの表情が一変した。
「私が楽しむためなら世界の一つや二つ、どれだけ汚れて歪んでいっても構わないの」
「ふざけんなぁ!!」
「やっぱ悪い奴かー!!」
悪魔のような表情とはまさにこのことと言わんばかりの彼女の笑いにそう叫ばざるを得ない。そんな彼女は俺の方へと近付くと、顎へと手を当て顔を覗き込んでくる。
「私・・・この魔力にあふれたエレンティアをもっともっと魔力で溢れさせて、そしてらどうなるか見てみたいの」
「爆発しちまうって言ってたぞ」
「でも・・・その前に・・・あなたたちと遊びたくて招待したのよ、黒月山に。さぁ!!宴の時間よ!!」
グレイさんの言葉に一切のリアクションも見せず手を叩くセレーネ。それを待っていたのか、部屋の中へと至るところから浴衣に身を包んだ女性たちが雪崩れ込んできて、俺たちを囲うように旅館でよく見る小さなテーブルとそれに乗せられた料理を準備していく。
「なんなんだこれは・・・」
「??」
「くっそー!!いい匂いさせやがって!!」
「食べる?はい、あーん」
「いるか!!」
そのまま踊ったり歌ったりを始める女性たち。さらには彼女たちは俺たちの身体を触りながらさらに歓声を上げている。
「こいつら・・・何が目的なんだ?」
「囚われた男を肴に女が酒を呑む。実に愉快ではないか」
「やっぱりこいつど変態だぁ!!」
嬉々とした表情で答えるセレーネに突っ込まざるを得ない。だが、彼女たちはそんなことなどお構い無しのようだ。
「ホレ・・・皆の者!!歌えや踊れ!!月夜に狂え!!宴じゃ宴!!」
セレーネのそのかけ声でさらに加速していくお祭り騒ぎ。そのあまりのテンションに俺たち三人は圧倒されるしかない。
「さて・・・頃合いか」
長い長い宴会がいつまでも続くのかとグッタリしていたところ、セレーネの目付きが変わったことに気が付いた。
「ヨウコ、例のものは」
「はっ!!準備できておりますなれば」
「女体の天国から鬼女の地獄へ」
セレーネが手を上げると彼女の真後ろにあった月が巨大化し、目映い光を放つ。
「なんだ!?」
「これはあの時の・・・」
「月がでかく・・・」
光へと飲み込まれた俺たち。そのあまりの光に目を閉じると、次に身体に衝撃が走り目を開ける。
「いったたたた・・・ここは・・・」
周囲を見渡すとそこはどうやら洞窟のよう。すると、先程まで隣にいたはずの二人がいないことに気が付く。
「あれ?ナツさん?グレイさん?」
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