4話 出会い
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的にそっちの方の国の出身なのかなと思って」
何か思い出せないかと思ったが、「自分の名前はマキ」以外のことがわからない。もしかしたら「マキ」という音に本当に漢字があてられていて、でもそれを思い出せないだけなのかもしれない。カリルの思い違いで、俺が元いた場所にそういう文化がなくて、自分の名前に「マキ」以外の表し方はないのかもしれない。
でも、出身関係なく、「マキ」という名前に他の表し方はないのだろうと、なんとなく思った。
「……カリルなら俺の名前にどういう字をあてる?」
「うーん、そうだねえ。名前にはたくさんの意味や思いがこめられているから、もしその名前が誰かにもらったものなんだとしたら、あまり見当違いなことを言わないようにしたいんだけど……」
「カリルなら。どうする」
力強く、念を押す。カリルの透き通った黄金の瞳を、真正面から捉える。
すると、カリルは再び柔らかい笑みを浮かべる。難題なわがままも、嫌な顔一つ見せず応えてくれるみたいだ。
「そうだね、私なら……」
「……」
「『真』って字に、希望の『希』でマキかな」
マコト。希望のキ。頭の中で反唱する。
「君は……少し話しただけでわかる。物事や与えられた試練に対して、まっすぐ、誠実に取り組むような子なんだろう。そんな君は、きっと困難にぶつかった時に、解決のためにいろいろと動くことができる。周囲の人々の希望となることもあるだろう。そんなイメージが浮かんだんだけど……満足かな?」
______自分が今までどういう生活をして、どういうことに取り組んできたのかは全く思い出せない。今のこの自分は、カリルのために繕っているだけなのかもしれない。
だとしても、この言葉は今の俺に対してまっすぐ投げかけられたものであって、今の俺が何者だとしても、間違いにも、無駄にもならない。
温かい言葉が、嬉しかった。この気持ちは、きっと素直に受け取っていいものだ。
「ありがとう」という言葉は、恥ずかしくなってしまって出てはこなかったが。
「ふふ、喜んでもらえていそうで何よりだよ」
つい緩んでしまった口元を見て、カリルは全て理解したかのように呟いた。カリル自身も満足げな表情を浮かべていた。
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