4話 出会い
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たわけじゃないと思う。というか、誘拐されたかどうかっていうのも定かじゃなくて……」
今の俺の状況と、考えを全て共有した。
つい先ほど目が醒めて、この空間にいると知ったこと。この空間について、俺は何も知らないこと。そして、なぜかこの空間に来る前のことが一切思い出せないこと。
だから、アンタの状況を聞いて、頼ろうとしていたこと。アンタもここについて何も知らないなら、一緒に脱出の方法を探してほしいということ。
全ての説明を、宣教男は真剣な眼差しで聞いていてくれた。そして、終わったら柔らかく微笑んで、迷うことなく「もちろん手伝うよ」と言った。
話はちゃんと通じるし、かなり協力的、そして優しい性格の持ち主のように見える。先ほど俺に対して"未成年"という単語を使っていたことから察するに、この人はきっと大人だ。先ほどは混乱していて大丈夫か?と思ったが、本当はいい感じの頼れる人なのかもしれない。
「君は随分としっかりしてるんだね。私より立派だ。ぜひとも親御さんに会ってみたいよ」
あはは、と笑いながら男は言う。俺の緊張を説くための気遣いだろうか。
自分がどのように育ったかも思い出せないから、ただただ褒められて少し気恥ずかしい気持ちになって、その後会話を続けることができなかった。
男はよいしょ、と小さく零して立ち上がる。俺も、と体勢を立ちやすいように変えようとしたところで、目の前に手が差し出された。大人しくその手を軽く握ると、グイと引っ張りあげてもらえた。
立ってみると、俺は少しだけ男のことを見上げるような形になった。俺はそこまで身長が低いわけではないし、むしろ長身だと思うがそれより高いとは。……いつか、抜かせるといいな。
密かに対抗心を燃やしていることに勘づかれたのか、男は含みのある笑い方をしながら、少し屈んで俺と目線を合わせた。その後ぽんぽん、と頭を数度なで、
「大丈夫。君は私の背なんて、すぐに追い越しちゃうだろうから」
とあやすように言った。またもや気恥ずかしい思いを。そのうち背を抜かすだけでなく、仕返しもしないといけない。
「さて、そろそろ行こうか……と思ったけど、そういえば名前を教えていなかったね」
「あ……」
名前、名前。
「私はカリル。ここに来る前のことは覚えていないんだけど、名前だけはちゃんと覚えていたよ」
「俺も……俺も、名前は覚えてる」
「じゃあ、君の名前は?」
「マキ」
パチパチとカリルは数度瞬きをした後、手を顎にあてて少し考えるような素振りを見せた。何か、おかしいことでも言ってしまったのだろうか。少し不安な気持ちを覚える。
「マキくんって、自分の名前を漢字を使って書いたりすることはある?」
「漢字……?」
「うん。私の認識だと、君の服装
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