第34話 一家団欒。父上はエスケープ
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い訳にはいきません。
私が思案していると揚羽が助け舟を出してくれました。
「麗羽殿。次は私の杏仁豆腐を正宗様に食べていただきたいです。麗羽殿ばかり狡いです。その杏仁豆腐はお義父様に食べて戴くのがよろしいのではないでしょうか。お義父様は夕餉も取らずに政務を為さっているとのこと。義娘となる麗羽様の料理を口にすれば、きっとお喜びになられると思います」
揚羽は父上をスケープゴートにするつもりのようです。
父上、お許しください。
私は心の中で父上に安否を祈りました。
「そうですわね。お義父様のことをすっかり忘れていましたわ。こんな遅くまで政務をされていては体に毒ですわね。私の料理で英気を養っていただかないといけませんわね。お義母様。お義父様の処に案内してくださいませんこと」
「麗羽ちゃん。それは良いわね。あの人も多分お腹を空かせていると思うわ。義娘の手料理を食べれないなんて可哀想だと思っていたのよ。あの人の事だから涙を流して喜ぶと思うわ。麗羽ちゃん。一緒にあの人の処に行きましょう」
母上は余程、昼間のことが腹に据えかねているようです。
麗羽と揚羽は美人なのですから、そう思うのは素直な気持ちだと思います。
それに父上にとって最愛の人は母上ただ一人だと思います。
私は今度は父上の援護射撃をすることを止めました。
ここで私が余計なことをして、母上の矛先が私に向くかもしれないです。
麗羽の杏仁豆腐を鍋一杯食べる勇気は持ち合わせていないです。
「はい、お義母様。正宗様。少し出かけて来ますわね」
麗羽はうきうきした表情で私を見ています。
「正宗。揚羽ちゃんの料理もしっかり味わうのよ」
母上は私が麗羽の料理を食べていた時の笑顔を私に向けて来ました。
しっかり食べろということですね。
母上と麗羽は意気投合して、父上の居る政庁の執務室に向かって行きました。
父上、頑張ってください。
「正宗様。どうぞお召し上がりください」
揚羽は私の手に杏仁豆腐の入った皿を渡して来ました。
麗羽の件で杏仁豆腐に抵抗感を感じていた私は恐る恐る口にしました。
「えっ!美味い・・・」
私はつい気持ちを口に出してしまいました。
本当に美味しいです。
「正宗様。私の杏仁豆腐は不味いと思ってらしたのですか?失礼ですね・・・・・・。私が味見もしていない料理を人前に出すわけがありません。お陰でこの一皿しかできませんでしたけど・・・・・・」
揚羽は剥れた表情で私から顔を背けました。
「はは・・・・・・。面目ない。麗羽の料理が不味い」
私が話すのを揚羽は一差し指で口元を押さえました。
「そのようなことは人の居る前で言うものではありませんよ。
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