第九十七話 東京のお盆その十二
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「そうしているんだ」
「だから日本でもなのね」
「夜道で酔い潰れるとな」
「危ないのね」
「冬は特にな」
この季節はというのだ。
「そうなんだ」
「じゃあ外では飲み過ぎないことね」
「酔い潰れる位にな」
「本当に凍死するから」
「東京の冬は寒いだろ」
「冷えるのよね、物凄く」
東京に生まれ育っているからわかることだ、この街の冬は極めて寒い。気温が下がるだけでなくからっ風でさらに冷えるのだ。
「東京って」
「そんなところで夜に酔い潰れたら」
「凍死もね」
「あるからな」
「要注意ね」
「ロシア程じゃなくてもなんだ」
寒さはこの国程ではないがというのだ。
「寒いことは寒いんだ」
「ホームレスの人が寝ない位に」
「そこまで寒いからな」
それだけにというのだ。
「飲む時は注意するんだぞ」
「そうしていくわね」
咲はウイスキーを飲みつつ答えた。
「私も」
「そうしなさいね、東京の冬は寒いのよ」
母も言ってきた。
「だから本当に夜に酔い潰れたら」
「凍死するのね」
「そうなるから」
だからだというのだ。
「間違っても酔い潰れない、まして女の子ならね」
「尚更よね」
「外でかなり酔ってるだけでね」
「危ないわよね」
「世の中悪い人も多いから」
「道行く人も」
「何されるとわからないわよ」
泥酔状態だと、というのだ。
「お金取られたりね」
「他にもよね」
「危ないから」
だからだというのだ。
「本当にね」
「注意して」
「飲むのよ」
「外だと」
「お家の中ならいいけれど」
ウイスキーを飲む娘に話した。
「外ではね、あとね」
「あと?」
「咲は飲んでも変わらないわね」
こうもだ、母は言った。
「そうよね」
「ああ、絡んだり暴れたり」
「酒乱じゃないわね」
「そういうのないわね」
自分でもだ、咲は言った。
「言われてみたら」
「そうよね」
「うちは代々そうだな」
父も言ってきた。
「飲んでも乱れないな」
「そうなのね」
「お祖父ちゃんもそうだしな」
「お父さんもで」
「母さんだってそうだしな」
「それで私もなのね」
「それはいいことだ」
酒乱でないならというのだ。
「やっぱり酒乱はな」
「悪いことよね」
「ああ、よく飲んで絡んだりな」
「暴れたり」
「そんな人もいるからな、中にはな」
父は焼酎を飲みながら苦い顔で話した。
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