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第三十六話 戻ってきた現実、されど・・・
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け眺めると≪結城明日奈 様≫と書かれた下にあるスリットへとパスを走らせる。すると、先ほどと同様にかすかな電子音と共にドアがスライドした。病室の中に踏み込んでいくと、月雫の部屋同様に広い病室がカーテンで仕切られていた。そのカーテンを引くと見慣れた顔が見えた。それを見た桜火はたった一言呟いた。

「・・・・・・・ふぅ、世間ってのは思ったより狭いんだな」



「ん?誰かいるのかね?」

明日奈の顔を見ながら物思いにふけてると、突然背後から年老いてはいるが貫禄のある声が聞こえてきた。声のした方へ顔を向けると、そこにはシルバーグレーの髪をオールバックにした恰幅のいい初老の男性と人のよさそうな男がいた。

「どちら様かな?」

「初めまして。SAOの中でアスナさんにお世話になっていたものです。SAOではソレイユと名乗っていました」

SAOのアバター名を名乗ると初老の男性が驚いたような顔をした。

「おお、では君があの・・・おっと、自己紹介がまだだったね。明日奈の父の結城章三だ。わざわざ足を運んでくれてすまないね。明日奈とも仲良くやっていたと聞いてるよ」

「月影桜火です。わたしの方こそ何のご連絡もせずに申し訳ありません。明日奈さんには大変お世話になりました・・・そちらの方は?」

自己紹介を終えると桜火はもう一人の男性へと視線を向ける。それに気づいた章三氏は桜火が視線を向けた人物の紹介を簡潔に行った。

「彼かい?彼は私の腹心の息子でね。うちの研究所で主任をしている須郷君だ」

「よろしく、須郷伸之です。―――そうか、君があの≪最強の剣士≫か」

「・・・・・・月影桜火です。最強の剣士と言ってもあくまでゲームの中の話しですよ」

須郷伸之だが人のよさそうな笑顔を浮かべながら自己紹介をするが、桜火は表情にこそ出さないが訝しんでいた。
それぞれの自己紹介が終わると章三氏はアスナの枕許に近寄ると、そっと髪を撫でた。しばし沈思した後、章三氏は桜火に向きなおり口を開いた。

「では、私は失礼させてもらうよ。月影君、また娘の見舞いに来てやってくれ」

「わかりました」

桜火の返答を聞くと病室を出て行く章三氏。あとに残った須郷伸之は先ほどの章三氏のように明日奈の枕許に近寄ると、明日奈の髪に触れようとするが桜火がさせなかった。

「はなしてくれるかな?」

「不用意に患者に触れるものじゃないと思うんだけど?」

桜火が手を離すと須郷伸之も明日奈に向けていた手を引っ込める。数秒にらみ合った後、口を開いたのは桜火だった。

「須郷伸之、だったか?レクトのフルダイブ技術研究部門ってのはご存知かい?」

「・・・僕が主任をしているところだが、それがどうしたんだい?」

なおも人のよさそうな表情
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