フェアリィ・ダンス編〜妖精郷の剣聖〜
第三十六話 戻ってきた現実、されど・・・
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くことさえままならなかった。その事実を突き付けられた桜火は夜な夜な一人で泣いていた。比喩ではなくマジで。
「ところで、今日の朝食はおいしいですね。誰がつくったんです?」
「おれだ」
水霊の言葉に桜火が答えた瞬間、場の雰囲気が凍った。
「・・・桜火・・・お前はもう師範代なんだぞ・・・こういうことは下の者がやることなんだが・・・」
「そうか、それは知らなかった」
いけしゃあしゃあと嘘を吐く桜火に泰全は頭を抱えたくなった。これでは下の者に示しがつかなくあるのだが、たかが注意した程度で桜火がそれを直すとは思っていない泰全はもはや諦めの溜息を吐くしかなかった。ちなみに、SAOに囚われる前を含め、泰全がこれを注意するのは十三度目である。
「あきらめた方がいいと思いますよ、当主?」
桜火の姉である焔の言葉に泰全は溜息を吐くことしかできなかった。
「はぁ・・・ところでこの後おまえら二人はどうする?」
「私は東京に戻りますよ」
「おれはしばらく東京にいることになりそうです」
「そうか、わかった」
朝食をとり終えると、桜火はかかりつけの医師のもとを訪ね東京でSAO帰還者の定期健診を受けられるよう紹介状を書いてもらうと、焔とともに東京へ出かけて行った。未だに目覚めない彼女の見舞いのために。
◆
埼玉県所沢市―――その郊外にある最新鋭の総合病院にルナは眠っている。デスゲーム≪ソードアート・オンライン≫がクリアされて二ヶ月がたったが未だに目覚めない人たちが三百人もいた。その中にソレイユの恋人であるルナこと柊月雫も含まれていた。手続きを取り、通行パスをもらうとエレベータに乗り込み最上階である十八階まで登っていく。最上階まで到達し、無人の廊下を歩いていくと目的の場所が見えてきた。
≪柊月雫 様≫
そう書かれたプレートの下にあるスリットにパスを走らせると、かすかな電子音と共にドアがスライドした。中に入り広い病室を仕切るためにあるカーテンを引くとそこには最愛の人が眠っている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・
桜火は何をするでもなく月雫のことをただ見つめているだけだったが、その瞳は憂いに満ちていた。帰り際に一度だけ優しく頬撫で病室を出て行く。憂鬱な気分でエレベーターホールに向かう中、ある一つのネームプレートが目に付いた。
≪結城明日奈 様≫
そう書かれたネームプレートを見た桜火は二か月前に分かれる際に聞いた名前を思い出していた。
『わたしはね、結城・・・明日奈。十七歳です』
通行パスを取出し一度だ
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