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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
ライン川の夕べ その2
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て、厳しい賠償を請求されたドイツは国軍を縮小せざるを得なかった。
だが、賠償の支払いのためには外貨が必要だった。
そこで目を付けたのが、軍事顧問団、今風にいえば、人材派遣業である。
まず手始めにソ連赤軍の近代化をし、中南米の戦争に参加した後、帝政時代からつながりの深い支那に軍事顧問団として参加した。
中独合作の名目で秘密裏に送り込まれていたドイツ軍事顧問団は、1930年代末まで続いた。
 
 第二次大戦の敗戦により解体した国防軍(ヴェアマハト)の将校たちは、第一次大戦後に海外にに軍事顧問団として参加した顰に倣って、エジプト、独立直後のシリアなどに活路を求めた。

国共内戦で台湾に落ちのびた国民革命政府軍は、ソ連によって支援され組織化された人民解放軍に敗れ去ったことを反省し、かつての敵国である日本に秘密裏に頼った。
団長富田直亮を代表とする83名の軍事顧問団は、富田直亮の支那名:白鴻亮から白団(パイダン)と名乗った。

金門島防衛などの一定の成果を上げ、国府軍の増強を成功させたのを見た西ドイツ軍は、1963年より再び秘密裏に軍事顧問団を組織して、退役扱いにした将校たちを送り込んだ。
それが世に言う「明コ小組(ミンティグルッペ)」で、正式名称を「明コ專案連絡人室」というものである。




「閣下、失礼ですが……あの恐ろしい科学者、木原を説得してわれらの陣営に引き込むことが出来ましょうか……」
「いや、できる!」
 老人は、思わず、満身の声でいってしまった。
「わがドイツ、6000万国民のために、その身を捧げてくれまいか」
杖をもって、大地を打ち、老人は、深々と頭を下げて、キルケにお辞儀した。
 
 その言葉を聞いた瞬間、キルケの体が一瞬震えた。
シュタインホフ将軍は、力なく垂れている孫娘の両腕を右手で握りしめると、
「キルケ。わしからも頼む。この通りじゃ」
肩を震わせ、枯れた声で語った。

キルケは、ちょっと、うつ向いた。珠のような涙が(ゆか)に落ちる。
「軍学校の門をくぐったときから、すでにこの身は祖国のためと覚悟はしておりましたが……」
だが、やがて面を上げると、告白を始めた。
「喜んで、お引き受けいたしましょう」
周囲が驚くほどに、きっぱりいった。
 そして、覚悟のほどを改めて示す。
「もし、失敗いたしましたら、その時は、笑って死にましょう。
この世にふたたび、女の身を受けて生まれては来ません」
凛々とした態度になると、両肩の露出したロマンチック様式のドレス姿のキルケは立ち上がる。
水色のドレスの長い裾を持ち上げて、慇懃に膝折礼(カテーシー)で、挨拶をして見せた。

キルケが出ていくのを待ちかねていたように、男は後ろに待ち構えていた将校団を呼び寄せる。
「このBETA戦争の
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