第九十七話 東京のお盆その五
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「結構な」
「健康診断で引っ掛かるの」
「そうなるんだ」
これがというのだ。
「髪の毛がなくなったり太ったりもしてな」
「健康診断にもなの」
「引っ掛かってくるんだ」
「そうなるのね」
「それならまだましでな」
「健康診断でどう言われても」
「死ぬ人も出るんだ」
父はこのことは残念そうに話した。
「四十年生きていると同級生もな」
「死ぬ人出るの」
「ああ、どうしてもな」
「そうなの」
「事故もあるし病気でもな」
「あるのね」
「一番残念なのは自殺だけれどな」
このことはこれ以上はないまでに残念そうに話した。
「やっぱりな」
「それなのね」
「自殺で死なれるとな」
そうなればとだ、咲にその顔のまま話していった。
「ご家族も無念だし友達や同僚の人達だってな」
「そう思うのね」
「無念で残念にな、知っている人の誰もがな」
それこそというのだ。
「本当にな」
「そう思うから」
「だからな」
「自殺はするものじゃないのね」
「自殺する人は物凄く思い詰めていてな」
「それでするのね」
「けれどもう絶望しきっていないと」
さもないと、というのだ。
「するものじゃないな」
「そうよね、それは」
咲もそれはと応えた。
「私の周りそんなお話ないけれど」
「あったら思うしわかるぞ」
「自殺のことが」
「ああ、幾ら絶望してもな」
それでもというのだ。
「それはな」
「するものじゃないのね」
「そうだ」
咲に強い声で話した。
「それだけはな」
「そうなのね」
「本当にな」
まさにというのだ。
「自殺なんてな」
「するものじゃないわね」
「残った人達はどれだけ無念に思うか」
「人のことも考えることね」
「家族や友達、大抵の人に死んだら悲しむ人がいるんだ」
「相当酷い人でないと」
「そうした人がいるんだ」
父は悲しい顔で話した。
「だからな」
「自殺はしないことね」
「それ位なら今いる場所から逃げることだ」
「逃げることも大事なのね」
「自殺するよりましだ、お父さんはある人に言われたんだ」
「何て言われたの?」
「自殺は一番駄目な解決の方法だってな」
その様に言われたというのだ。
「逃げるにしてもな」
「駄目な逃げ方ね」
「向かうことが無理な時だってあるんだ」
「そんな時もあるのね」
「生きてるとな、まさかアメリカまで泳いでいくことは出来ないだろ」
「そんなの絶対無理よ」
咲は父の今の話に眉を顰めさせて答えた。
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