第九十七話 東京のお盆その四
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「切り替えたんだ」
「そうだったのね」
「清酒を飲まれて」
「それから日本酒がお好きになられたのね」
「こんな美味いものがあるかと言われてな」
それからだったという。
「実は甘いものもお好きで」
「アンパンとかね」
はじめて食パンを食されてその味に魅了された、そしてそれから木村屋のアンパンが定着したのである。
「アイスクリームとか」
「蒸しカステラに羊羹にな」
「それで日本酒もだったのね」
「甘いものはおやつでな」
その時に召し上がられていたという。
「一切れずつだったらしいな」
「一切れだけ?」
「皇室は質素だからな」
このことは他ならぬ明治帝が厳格に定められたことだった。
「それでだ」
「おやつ一切れなの」
「着られている服は軍服で裏が破れても縫ってな」
「着られていたのね」
「煖房は火鉢一つだったんだ」
「物凄いわね」
「兎に角質素でな」
それは今もである、宮内庁の職員全員の人件費を含めた一年辺りの予算は北朝鮮の独裁者の一年の予算よりも少ない。
「甘いものもな」
「そんな風だったの」
「だがお酒はお好きでな」
「よく飲まれていたの」
「酔って何かの弾みでな」
それでというのだ。
「侍従長に諫言みたいに注意としてな」
「ああ、投げられたのよね」
「冗談で女官さんのお部屋に入ろうとしたか」
「お相撲取って?」
「それでな」
「投げられもしたのね」
「そうしたお話もあるんだ」
明治帝にはだ。
「それでお酒をよくな」
「上杉謙信さんと同じ感じ?」
「あそこまで凄くなかったと思うが」
それでもというのだ。
「よく飲まれてな」
「糖尿病になられて」
「それが死因にもなったしな」
「白ワインに切り替えられたのね」
「ついでに甘いものも制限がかかった」
お好きだったそれ等にもだ。
「そうだったんだ」
「それで白ワインね」
「あの方も飲まれていたんだ」
「そうだったのね」
「まあ日本酒よりもな」
「ワインの方がいいのね」
「そのことは事実だからな」
酒を飲むならというのだ。
「健康を考えるとな」
「そうなのね」
「だからな」
それでというのだ。
「お父さんもな」
「日本酒やビールよりも」
「そうしたのを飲んでいるんだ」
「健康を考えて」
「それでだ」
そのうえでというのだ。
「実際いい歳になったが」
「それでもなの」
「健康診断でも引っ掛かっていないぞ」
「そうなのね」
「お父さん位の歳になるとな」
娘に笑って話した。
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