第九十六話 お盆になりその八
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「人間悪いことをしてばかりで」
「徳を積んでないとね」
「餓鬼になるのね」
「それでずっと餓えと渇きに苦しむのよ」
そうなるというのだ。
「人間として生きていて人間の底を突き破ってね」
「そこからさらに堕ちて」
「餓鬼になったらね」
身体は人間でもというのだ。
「もうね」
「死んでも餓鬼になって」
「ずっと苦しむのよ」
「徳を積まないと死んでもそうなるのね」
「そうでしょうね、生きているうちから嫌われて」
それも徹底的にというのだ。
「死んでもね」
「死んでよかったとか言われて」
「それで餓鬼に生まれ変わるのよ」
「人間そうはなりたくないわね」
咲はここまで聞いてしみじみとして言った。
「本当に」
「そうでしょ、やっぱり」
「だから徳を積むことね」
「いいことをすることよ」
「そうすることね」
「誰にとってもいいから」
徳を積むことはというのだ。
「現実問題としてね」
「自分にとっても」
「そう、いいことをしたら気持ちいいっていうけれどね」
「自分の心にもいいのね」
「そうよ、ただ気をつけてね」
ここで愛は真面目な声になって咲に話した。
「暴走したらね」
「駄目よね」
「そうよ」
このことも言うのだった。
「それこそカルトになるから」
「暴走したら」
「自分がいいこと、正しいことをしていると思っていても」
「悪いことになるのね」
「十字軍とか異端審問が正しいか」
「そんな筈ないわね」
咲も即座に答えた。
「あんなのがね」
「悪意も駄目だけれど」
「暴走も駄目ね」
「我がさえよければいいで悪意全開の奴はすぐに皆から嫌われるわ」
そうなるというのだ。
「けれど暴走する奴もね」
「嫌われるのね」
「自分だけが正しいとか思ったら」
それこそというのだ。
「他人のことを考えなくなるからね」
「我がさえよければいいね」
「それはそれでね」
善意からはじまっていてもというのだ。
「やっぱり同じよ、そうなっても死ねばね」
「餓鬼ね」
「それになるわ」
そうなるというのだ。
「末路はね」
「そうなるのね」
「そう、徳を積んでも」
それでもというのだ。
「暴走はね」
「絶対に駄目ね」
「暴走した連中が集まったら悪意ある連中と同じだから」
まさにというのだった。
「やることはね」
「暴走しても正しいことをしているとか言ったら」
「それまさに十字軍だから」
暴虐の限りを尽くしたことで知られる彼等と同じだというのだ、事実世界史において彼等の行動の悪辣さは悪名そのものと言っていい。
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