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第十五話 仮住その六

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「休ませてもらって」
「過ごしているか」
「そうさせてもらっています」
「そうか、何かだ」
 祖父は自分に語る孫を見てだった。
 微かに笑ってだ、こうも言った。
「少しずつだが表情が出て来たな」
「そうですか」
「そうなっている、感情もな」
 こちらもというのだ。
「芽生えてきているか」
「自分でもそんな気がします」
「庚様の下に行き」
「地の龍と教えられてから」
「そうなっているか、それならだ」
 ??に考える顔で話した。
「いい」
「いいのですか」
「私はお前を人間として生み出したのだ」
 娘夫婦の遺伝子を用いてというのだ。
「そして育ててきたからな」
「人間として」
「これまでどうしてもだ」 
 努力してもというのだ。
「お前に感情が生まれず残念に思っていたが」
「その感情が生まれてきているので」
「それでだ」
 その為にというのだ。
「まことにな」
「いいのですか」
「そうだ」
 それでというのだ。
「嬉しい、ではこのままな」
「僕はですか」
「そうだ、地の龍の人達と共にいてな」
「感情を作っていくことですか」
「そうしていってくれ」
「それでは。ただ」
 ??はサラダの中のアスパラガスを食べつつ祖父に問うた、ほんの少しだが考える顔にもなっている。
「僕に何故これまで感情が生まれなかったか」
「そのことか」
「どう思いますか」
「わからない、どうしてもだ」
 祖父は孫に苦い顔で答えた。
「お前に様々なことを教え身に着けてもらったが」
「それでもですか」
「喜怒哀楽等な」 
 そうしたというのだ。
「感情は備えられなかった、私の教育が悪かったのか」
「それは」
「娘達がああなったこともな」
 ??の両親がというのだ。
「悪かったか、私は親として祖父としては」
「お祖父様は」
「失格だったか」
 苦い顔での言葉だった。
「そうだったか」
「それは」
「私が思っていることだ」
 あくまでという返事だった。
「だからな」
「それで、ですか」
「気にすることではない」
 ??がというのだ。
「学校に通わせても特別にさせていたし」
「そうしたクラスに」
「それも変えてな」
 そしてというのだ。
「地の龍の方々と交わっていき」
「それで、ですか」
「感情が芽生えたか、ならな」
「このままですね」
「人間としてな」
 そのうえでというのだ。
「感情を備えていき」
「地の龍として戦う」
「そうしていってくれ」
「わかりました、ただ」
 ??は食べつつこうも言った。
「地の龍が勝ちますと」
「人間が滅ぶな」
「そうなります」
「わかっている」
 これが祖父の返事だった。
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