第十五話 仮住その六
[8]前話 [2]次話
「休ませてもらって」
「過ごしているか」
「そうさせてもらっています」
「そうか、何かだ」
祖父は自分に語る孫を見てだった。
微かに笑ってだ、こうも言った。
「少しずつだが表情が出て来たな」
「そうですか」
「そうなっている、感情もな」
こちらもというのだ。
「芽生えてきているか」
「自分でもそんな気がします」
「庚様の下に行き」
「地の龍と教えられてから」
「そうなっているか、それならだ」
??に考える顔で話した。
「いい」
「いいのですか」
「私はお前を人間として生み出したのだ」
娘夫婦の遺伝子を用いてというのだ。
「そして育ててきたからな」
「人間として」
「これまでどうしてもだ」
努力してもというのだ。
「お前に感情が生まれず残念に思っていたが」
「その感情が生まれてきているので」
「それでだ」
その為にというのだ。
「まことにな」
「いいのですか」
「そうだ」
それでというのだ。
「嬉しい、ではこのままな」
「僕はですか」
「そうだ、地の龍の人達と共にいてな」
「感情を作っていくことですか」
「そうしていってくれ」
「それでは。ただ」
??はサラダの中のアスパラガスを食べつつ祖父に問うた、ほんの少しだが考える顔にもなっている。
「僕に何故これまで感情が生まれなかったか」
「そのことか」
「どう思いますか」
「わからない、どうしてもだ」
祖父は孫に苦い顔で答えた。
「お前に様々なことを教え身に着けてもらったが」
「それでもですか」
「喜怒哀楽等な」
そうしたというのだ。
「感情は備えられなかった、私の教育が悪かったのか」
「それは」
「娘達がああなったこともな」
??の両親がというのだ。
「悪かったか、私は親として祖父としては」
「お祖父様は」
「失格だったか」
苦い顔での言葉だった。
「そうだったか」
「それは」
「私が思っていることだ」
あくまでという返事だった。
「だからな」
「それで、ですか」
「気にすることではない」
??がというのだ。
「学校に通わせても特別にさせていたし」
「そうしたクラスに」
「それも変えてな」
そしてというのだ。
「地の龍の方々と交わっていき」
「それで、ですか」
「感情が芽生えたか、ならな」
「このままですね」
「人間としてな」
そのうえでというのだ。
「感情を備えていき」
「地の龍として戦う」
「そうしていってくれ」
「わかりました、ただ」
??は食べつつこうも言った。
「地の龍が勝ちますと」
「人間が滅ぶな」
「そうなります」
「わかっている」
これが祖父の返事だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ