暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
賊徒の末路 その2
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はないさ。
訓練所は東ドイツの都市、ドレスデンにあるシュタージの秘密基地で行ってな。
そこには、KGBの手練れ、アルファ部隊の精鋭たちがいた訳よ。
機関銃の扱い方や、自動車爆弾づくり、それに短剣の訓練まで仕込んでくれるのさ」
男は饒舌(じょうぜつ)に、PLFPとKGB、シュタージの関係を明らかにした。
「でもよお、あのゼオライマーのパイロットに入れ込んでいる今の議長になってから、その秘密基地は閉鎖されちまった。
だから俺たちは、レバノンくんだりまで行ってKGBに直接指導を仰ごうってわけさ」

 だが、残念なことに榊政務次官とマサキが知己(ちき)の関係であることを知らなかった。
そして今の内容は、マサキが渡した秘密の通信装置によってすべて録音されていた。
「フフフ。どうだ、恐ろしかろう。
あんたも命が惜しかったら、俺の配下に入れ、すぐここで。
KGBと関係してれば、何かあっても連中が助けれくれるしよお」


 男が頷くと、榊は礼とばかりに胸ポケットから高級煙草のダンヒルを差し出す。
(ダンヒルは1967年にCarreras Tobacco Companyに買収された関係で、ダンヒル名義で煙草や喫煙具を出すようになった)
赤に金文字の箱を受け取ると、右手の親指を立て、食指と中指の間に挟み、スパスパと勢いよく空ぶかしをする。
両眼を閉じて、気障(きざ)にタバコを吸い、ふうっと紫煙を吐き出す。
そして、まるで勝ち誇ったかのように榊をねめつけた。




 ダッカ近郊にあるテズガオン空港に航空機は降りた。
テズガオン空港は、戦時中の1941年に建設された軍用空港で、1947年のパキスタン独立後は軍民共用空港だった。
1971年の第三次印パ戦争によって、パキスタンから独立以降も同じように使用された。
 本格的な国際空港であるダッカ国際空港は、この当時は建設中で、ダッカには手狭なこの空港しかなかったのだ。
(ダッカ国際空港は、今日のシャージャラル国際空港。2010年まではジア国際空港)
この空港に降り立った理由は、給油のためとされ、機内の囚人たちは休憩と称して、機外に解き放たれた。
そのとき、榊達政府職員たちは奇妙なことに機内に残った。

 囚人たちは狭い機内から飛び出した解放感から、好きなことを口走る。
「ウへへ。あとすこしで俺たちは自由の身だぜ」
「日本政府も馬鹿だな。翼の生えたトラを野に放つようなものなのに」
不幸なことに、囚人たちは空港のロビーの先に待つものを知らなかった。

 囚人たちはやがて、バングラ兵の立っているゲートを超えて、ロビーに入ろうとした。
 その時である。
M16小銃を持った男が、100名近い囚人たちの行く手を遮ったのだ。
「なんだ、てめぇは!」
男の後ろに立つ
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