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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
ライン川の夕べ その1
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れたマサキもシガレットケースからホープを取り出すと、紫煙を燻らせる。
「東独の案件か」
「わが国の大手ゼネコンが欧州進出の足掛かりとして、東ベルリンの再開発事業に入札したくてね……。
向こうの通産次官とアポイントメントとを取ってほしいと。
でも彼は政治局役員も兼ねてるから、警備の関係上、紹介がないと会えなくてね」
「通産次官……」
鎧衣の老練な話術に乗せられてしまったことに、マサキは今更ながら気づいた。
「まさか、アーベルか」
「ご名答」

 おそらく、自分の知らないところで話が出来上がっている。
鎧衣はただ、伝えに来ただけだ。 
 こうなってはもうどうすることも出来まい。
マサキは、覚悟を決める。
「ところで今何時だ」
「まだ20時だよ。夜会の本番はこれからさ」
欧州の夜会は、午前3時ごろまで夜通し続くのが慣例だった。

 この際だ。ブレーメ家に電話するか。
おそらく電話口に出るのは、アイリスか、ベアトリクス。
久しぶりに、彼女たちをからかってやろう。
「電話はあるか」
「奥に行けば、プレス用の国際電話ボックスがあるが……」

 善は急げだということで、マサキはその場を辞した。
電話ボックスに向かって、小走りで書けていくとき、白銀とすれ違う。
「博士、こんな時間に、誰に電話するのですか」
「ちょっと野暮用でな。フハハハハ」
明るい灰色の軍服を着た集団といるところを見るとフランス軍か。
マサキは、白銀の方を向かずに、電話ボックスに急いだ。












 二人の男が夜会の端の方で話をしていた。
「なあ、あれが噂に聞くゼオライマーのパイロットか」
「ああ、あの20そこそこの青年将校だが、先頭に立ってBETAの中に切り込んでいったらしい」
「大分浮かぬ顔をしている様子だな」
「何かあったのだろう」
 軍楽隊の奏でる音楽の中、若い将校たちは静かに酒を飲んでいた。
皆一様に暗い表情を浮かべている。
「なあ、君はどう思う?」
「隊長、何がです?」
 男の名はクラウス・ハルトウィック上級大尉。
西ドイツ軍の戦術機隊長であった。
 金髪の髪を短く借り上げ、屈強な体つきではあるが、風采の冴えぬ男であった。
浮いた話もなく、けっして誇大な話はしないので、さほど人気はなかった。
 ただ大尉の身の上でありながら、戦術機部隊を米軍の協力を得て一から立ち上げた人物である。
世人は『現代のグーデリアン将軍』と、そやすほどの行動力の持ち主であった。


「バルクよ。我々の作戦は成功したんだろう。なのにこの暗さは何だ」
「……」
ヨアヒム・バルク大尉は、グラスに入ったワインを一気に飲み干すと小さくため息をつく。
「まぁ、なんというか……正直こんな気分では酒も
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